過払い金請求に利息をつけて請求する条件と取り戻す方法

過払い金は条件を満たせば利息をつけて請求できる場合があります。しかし、ただ過払い金請求をしても、利息をつけて取り戻すことはできません。利息をつけて過払い金を取り戻すには裁判をする必要がありますが、専門知識がないと自分で手続きをするのはむずかしく、裁判をしたとしても利息を取り戻せない可能性が高いです。

専門家に依頼することで過払い金の3〜5%の利息をプラスして取り戻すことができます。また、すでに完済している場合でも返済中の場合でも、利息をつけて過払い金を返還請求することができます。

過払い金請求できる利息とは

過払い金とは、貸金業者からの借り入れやクレジットカードのキャッシングなどの返済で払い過ぎていた利息のことです。過払い金請求によって過払い金を取り戻すことができ、さらに貸金業者が「悪意の受益者」であることが認められた場合、過払い金に利息をつけて請求できます。

民法(704条)では「悪意の受益者は、その受けた利益に利息を付して返還しなければならない。この場合において、なお損害があるときにはその賠償の責任を負う」と定められています。

悪意の受益者の「悪意」とは、善悪の「悪」ではありません。この場合の悪意とは「知っていた」という意味です。過払い金が発生することを知っていたのにも関わらず、返済を受け取っていた場合には「悪意の受益者」となります。

貸金業には法律で上限金利が設けられており、現在は利息制限法で上限金利は借り入れ元金に応じて15~20%と定められています。しかし、2010年6月以前は利息制限法と出資法という2つの法律が存在していました。

利息制限法の上限金利は借り入れ元金に応じて15~20%である一方、出資法の上限金利は29.2%と利息制限法よりも高く設定されており、2つの法律には金利の差(グレーゾーン金利)が生まれていました。

加えて、出資法で上限金利を超えれば刑事罰が科されていましたが、利息制限法の上限金利を超えていても、出資法の上限金利を超えていなければ罰せられることがなかったことから、多くの貸金業者は出資法に定められた範囲内で貸し付けをおこなっていました。

このことから、利息制限法の上限金利を把握したうえで、その上限金利を超えて貸し付けをおこなっていると最高裁判所の判決によって判断され、貸金業者は原則として悪意の受益者と推定されています。

過払い金が発生していたことを知っていながら返済を受け取っている「悪意の受益者」である貸金業者は、過払い金に利息をつけて返還する必要があるため、債務者は請求をすることで利息分も取り戻すことができます。

なお、 過払い金の利息の利率は以下のように過払い金が発生した日付によって変わります。

令和2年(2020年)4月1日より前の場合は料率5%

過払い金の利息は、旧民法(404条)で年5%が認められています。例えば、100万円の過払い金が5年前から発生していた場合、年に5万円の利息がつくため5年分の利息25万円を過払い金にプラスして請求できるということです。

しかし、令和2年(2020年)4月1日に民法が改正され、法定利率が5%から3%へと引き下げられました。ただし、すべての債権の利息が年3%へ変更されるわけではなく、民法改正前に発生した利息については、改正前の法定利率5%を適用することが認められていると考えられます。

つまり、令和2年(2020年)4月1日より前に完済している取り引きに関して貸金業者が悪意の受益者と認められた場合には、過払い金に加えて利息5%を請求できます。

令和2年(2020年)4月1日以降の場合は料率3%

令和2年(2020年)4月1日以降に過払い金が発生した場合の利率は、改正後の利率3%が適用されます。

ここで問題となるのは、令和2年(2020年)4月1日をまたいで過払い金が発生している場合の取り引きは3%が適用されるのか、それとも5%が適用されるのかについてです。

過払い金は「過払い金充当合意」を含む基本契約に基づく取り引きを、一連のものとして充当計算することにより算定されています。過払い金充当合意とは、取引中に発生した過払い金を、次の取り引きの借り入れ金の一部にあて、一部を支払い済みとして借り入れ金額から差し引くことに合意することです。

充当計算は引き直し計算とも言い、最初の取引を完済後、しばらくしてから同じ業者から再度借り入れをした場合に、この2つの取引を一連の取引として利息制限法に基づいて借金の残高を調べ直すことをいいます。

つまり、令和2年(2020年)4月1日よりも前の時点で過払い金が発生していた場合、すべて一連の取り引きとみなし、それ以降に発生する利息の利率もすべて年5%になると考えられます。

現状、多くの場合で料率5%が認められていますが、過払い金の利息の利率については今後、裁判における新たな争点となる可能性があります。発生している過払い金につく利息が5%なのか3%なのかについては、一度専門家にご相談ください。

過払い金の利息はいつからつけられるか

過払い金の利息がいつから発生するかについては、借主側が「それぞれの返済において過払い金が発生したとき」と主張しているのに対して、貸金業者側が「すべての取引が終了したとき」と主張しており、裁判でもたびたび争点となっていました。

しかし、2009年(平成21年)に最高裁判所の判決により、悪意の受益者となる貸金業者は、過払い金が発生したときから利息を支払わなければならないとして「過払い金が発生したときから」利息がつくことが認められました。

過払い金請求は個人でおこなうことも可能ですが、司法書士や弁護士など専門家に依頼した方が、確実に過払い金を取り戻すことができます。過払い金請求を考えているならば、まずは司法書士や弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

過払い金の利息は裁判で取り戻す

貸金業者が「悪意の受益者」と認められることで、過払い金に利息をつけて取り戻すことができます。しかし、貸金業者との交渉をおこなうだけで利息をつけて返還してくれる可能性はなく、反対に貸金業者は経営状況や返済状況を理由として、減額交渉をしてくることがほとんどです。

そのため、利息をつけて過払い金を取り戻す場合には、裁判所に過払い金返還請求を提訴する必要があります。裁判所への手続きは個人でおこなうことも可能ですが、裁判は平日の日中におこなわれます。また、裁判に必要な書類を個人で作成・用意することは、法的な知識がない場合には時間も労力もかかります。

さらに、貸金業者は裁判に慣れており、上手く隙を突いてくる可能性があるため、裁判をしたからといって必ずしも納得がいく結果を得られるとは限りません。

利息をつけて過払い金を請求したい場合には、司法書士や弁護士などの専門家に依頼することをおすすめしますが、専門家に依頼する場合にも注意が必要です。過払い金に利息をつけて取り戻すためには、貸金業者が「悪意の受益者」ということを裁判所で証明する必要があります。

しかし、過払い金請求に慣れていない専門家の場合、裁判をすると手間も時間もかかるため、交渉のみで手続きを進めて和解に持ち込もうとする可能性があります。より多くの過払い金を取り戻したいのであれば、過払い金請求を専門でおこなっている事務所なのか、また過払い金返還額や依頼件数などの実績もご確認ください。

過払い金に利息をつけた場合とつけなかった場合の請求額の比較

例えば、すでに5年前に完済した借金に100万円の過払い金が発生していた場合、利息をつけずに請求すると、戻ってくる過払い金は100万円です。

一方で、利息をつけて請求すると年5%の利息がつくため1年あたりに5万円×5年分として25万円の利息がつく計算になります。(利息充当方式による単純計算で算出した場合)つまり、過払い金請求をすることで125万円が戻ってきます。

利息あり 利息なし
戻ってくる過払い金額 125万円 100万円

発生している過払い金額が高ければ高いほど、また完済してからの期間が長ければ長いほど利息も高くなります。なお、現在返済中の場合でも利息をつけて請求することができます。

利息をつけずに請求することのメリットとして、過払い金を早く取り戻すことができる場合がありますが、実績のある専門家に依頼することでそこまで大きな差が出ることはありません。より多くの過払い金を取り戻すためには利息をつけて請求することをおすすめします。

過払い金に利息をつけて請求するときに知っておきたいこと

過払い金に利息をつけて請求するためには、次のような注意点を理解しておく必要があります。

過払い金の時効が完成する時期

貸金業者への返済に過払い金が発生しているのであれば取り戻すことができますが、時効が完成していた場合、過払い金を取り戻すことはできません。

過払い金の時効は「最後に取り引きをした日から10年」です。この期間が経過してしまうと、たとえ過払い金が発生していたとしても過払い金請求をすることができなくなります。

時効の完成に注意が必要なのは、完済した借金についての過払い金請求する場合であり、現在返済中の借金についての過払い金請求をする場合は、最後の取り引き(返済もしくは借り入れ)から10年が経過していることは考えにくいため、この限りではありません。

また、同じ貸金業者を相手に完済と借り入れを繰り返している場合には注意が必要です。その取引が「1つの取引」とみなされるか「分断された複数の取引」とみなされるかによって「最後の取引日」が異なるため、時効の完成日が大きく変わります。

同じ貸金業者と複数の取引をしている場合や、最終取引日が不明な場合には、司法書士や弁護士などの専門家に一度相談することをおすすめします。

民法705条に当てはまっていないか

民法705条では「債務の弁済として給付をした者は、その時において債務の存在しないことを知っていたときは、その給付したものの返還を請求することができない」と定められています。つまり、借金に過払い金が発生していることをわかっていながら返済を続けていた場合には、過払い金が返還されないということです。

過払い金は借り入れ期間が長ければ長いほど金額が高くなります。過払い金額を増やそうと、過払い金が発生しているのを知りながら返済を続けることは、過払い金請求をする権利を失うことにつながります。過払い金が発生していることを知った場合には、すぐに司法書士や弁護士などの専門家に相談してください。

ただし、専門家によっては手間も時間もかかる裁判をおこなうことなく、スピード重視で過払い金を取り戻すことに重点を置いている場合もあります。相談する際には「過払い金に利息をつけて取り戻したい」という旨を事前に伝えるようにしてください。

貸金業者の経営状態

取引をしている貸金業者の経営状況が悪く、倒産しかけている(または倒産している)場合は過払い金を請求できないことがあります。

大手の貸金業者だからといって安心はできません。2010年、大手貸金業者「武富士」が過払い金請求をする人が増えたことが原因で、経営状況が悪くなり倒産に追い込まれました。このときの過払い金に対する配当金は約3.3%であり、これは仮に過払い金が100万円発生していたとしても、33,000円しか返還されなかったということになります。

また、倒産とまではいかなくても経営状況が悪化した貸金業者は、過払い金請求に対する予算を削減する傾向にあります。過払い金を請求したとしても、返還される過払い金が減る可能性が高く、さらに利息つきで回収することは非常にむずかしくなります。

より多くの過払い金を取り戻したいのであれば、貸金業者の経営状況にも気をつける必要があります。また、長い期間返済している(あるいはしていた)借金があり、過払い金が発生している可能性があれば、すぐに手続きをすることをおすすめします。

裁判をせず和解で利息をつけることは困難

貸金業者はできるだけ返還する過払い金額を下げたいため、裁判をせずに貸金業者と交渉(任意和解)だけで、過払い金に利息をつけて取り戻せることはほとんどありません。

それどころか、貸金業者から過払い金の減額を求められることが多くあります。和解交渉で減額せずに返還してくれるような貸金業者であっても、「利息分はカットしてほしい」と提案されることは珍しくありません。

利息もつけてしっかりと過払い金を取り戻したい場合には裁判をすることで、取り戻せる金額が高くなる傾向にあります。

過払い金の利息は確定申告が必要な場合がある

過払い金を取り戻した場合には、税金がかかるケースとかからないケースがあります。過払い金が「収入」として認められた場合のみ、税金がかかります。

過払い金とは払い過ぎた利息のことで、本来は払う必要のなかったお金です。もともと自分のお金ということになるため、取り戻した過払い金は原則として「収入」とはみなされません。

しかし、過払い金に利息をつけて取り戻した場合、本来は払う必要がないのにも関わらず既に支払ってしまっている過払い金には税金がかかりませんが、まだ払っていない利息部分は「収入」としてみなされます。これにより、利息部分には税金がかかることになり、確定申告が必要になることがあります。

過払い金の利息は収入の中の「雑所得」に含まれ、過払い金の利息を含めた「雑所得」が20万円を超える場合には確定申告が必要となり、税金がかかります。なお、雑所得が20万円以下で、給与所得者である場合には確定申告は必要ありません。

過払い金に利息つきで請求したいなら

過払い金は、利息をつけて請求をすることができます。ただし、裁判をおこなわずに交渉だけで利息をつけて過払い金が返還されることはほとんどありません。利息をつけて過払い金を請求するためには、裁判をする必要があります。

過払い金請求の裁判は個人でおこなうことも可能です。しかし、貸金業者は過払い金請求に関する裁判に慣れているため、個人で貸金業者を相手に裁判を有利に進めるのは簡単ではありません。

過払い金に利息をつけて請求したい場合は、まず、司法書士や弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。司法書士法人杉山事務所には、過払い金に利息をつけて回収した実績も多数あります。相談をはじめ、過払い金があるかどうかの診断も無料でおこっていますので、まずはお気軽にお電話またはメールにてご連絡ください。

債務整理・借金減額は無料相談をご利用ください。

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