過払い金請求で争点となる一連の取り引きと分断の取り引きとは

過払い金請求でより多くの過払い金を回収するために裁判になることがありますが、その際に最も多い争点は取り引きが「一連」か「分断」かということです。

取り引きを一連とみなすか分断とみなすかによって、過払い金額や時効にも影響を与えるため非常に重要な争点です。判断する明確な基準は定められておらず、事例ごとに異なります。

ここでは取り引きが一連とみなされるか分断とみなされるかによって生じる問題や判断される基準について説明します。

「一連の取り引き」と「分断の取り引き」とは

借り入れから完済までの取り引きが一連なのか分断なのかが問題になるのは、同じ貸金業者から借り入れと完済を繰り返している場合です。

この場合、利息制限法に基づき過払い金を算出(引き直し計算)する際に、完済した時点で取り引きが分断され複数の取り引きとしてみなすか、それとも完済しても同じ取り引きとしてみなすかが問題となります。

完済後でも取り引きを分けずに同じ取り引きとしてみなすことを「一連の取り引き」といい、完済した時点で取り引きは分断され、違う取り引きとしてみなすことを「分断の取り引き」といいます。

なぜ過払い金請求で取り引きが一連か分断かが争われるのか

過払い金請求をした場合、貸金業者が請求した額をそのまま返還してくれるようなことは基本的にありません。何かしらの理由をつけて返還する過払い金額を下げようと抵抗してきます。

話し合いで解決できないと判断した場合には、裁判所に訴訟を提訴して判決によって過払い金を取り戻すことが最良です。

特に完済と借り入れを繰り返している場合には、取り引きを「一連」とみなすか「分断」とみなすかによって生じる過払い金の額が重要な争点となります。

取り引きが一連か分断か影響する場面

取り引きが「一連の取り引き」とみなされるか、「分断の取り引き」とみなされるかによって「時効の起算が変動する」「取り戻せる過払い金額が増減する」場合があります。

時効の起算が変動するケース

過払い金請求は最後の取り引き(借り入れや返済、完済)日を起算日として、10年で時効が成立します。ここで重要なのは「最後の取り引き日」がいつなのかという点です。分断の取り引きと認められた場合、それぞれの借り入れの完済日が時効の起算日となります。

一方で一連の取り引きと認められた場合、最も遅い「最後の取り引き日」が時効の起算日となります。つまり、仮に最初の取り引きの完済日から10年以上経過していたとしても最後の取り引き日から10年が経過していなければ、時効が成立していないことになるため過払い金を請求できます。そのため、回収できる過払い金が多くなる可能性が高くなります。

たとえば最初の取り引きを12年前に完済し、その1年後に同じ貸金業者から新たに借り入れをし、この取り引きも5年前に完済したとします。

分断の取り引きとして認められた場合、12年前に完済している最初の取り引きはすでに時効が成立しているため、過払い金の請求ができません。過払い金を請求できるのは、5年前に完済した2度目の取り引き分のみとなります。

しかし、2つの取り引きが一連の取り引きと認められた場合、最後の取り引き日は2度目の取り引きの完済日である5年前となります。そのため、最初の取り引きの際に発生した過払い金も請求できるようになります。

取り戻せる過払い金額が増減するケース

貸金業者からの借り入れを完済し、その後同じ貸金業者から改めて借り入れするという行為を3回繰り返したとします。

分断の取り引きとして認められた場合、それぞれの取り引きにおいて引き直し計算をし、3回の取り引きで発生した過払い金の合計を貸金業者に請求します。それぞれの取り引きで過払い金が10万円ずつ発生していたとすると、その合計である30万円を貸金業者に対して請求します。

しかし、仮に1回目の完済日が10年以上前であった場合、時効が成立しているため1回目の取り引きで発生した過払い金は請求できず、請求できるのは2回目と3回目の取り引きで発生した過払い金20万円だけになってしまいます。

一方で一連の取り引きとして認められた場合、3回の取り引きを1つの取り引きとして引き直し計算をおこないます。引き直し計算において分断の取り引きとの違いは、一連の取り引きの場合には、中断前に発生した過払い金を中断後の取り引きの借入金に充当して計算できる点です。

つまり、1回目の取り引きで発生した過払い金を、2回目の取り引きの借り入れに充当できるということです。

この場合、2回目の借金元本から1回目で発生した過払い金10万円を引いてから引き直し計算をすることになるため、借りたお金が減ることになり、利息金も少なくなります。

こうした引き直し計算をすることによって、一連の取り引きと認められた場合には過払い金額が増える可能性が高くなります。

貸金業者は分断と主張してくる

取り引きが一連と認められた場合、過払い金の支払いが多くなってしまうため、貸金業者は自身が有利となる「分断の取り引き」を主張してきます。

特に信販会社系(クレジットカード会社等)の貸金業者が、1回払いの取り引きについて分断の取り引きであると主張するケースが増えています。1回払いの取り引きに関して発生した過払い金については、過払い金充当合意は認められないという趣旨の主張がされてるのです。

過払い金充当合意とは、取り引き中に発生した過払い金を次の取り引きの借入金の一部にあて、一部を支払い済みとして借り入れ金額から差し引くことに合意することです。

1回払いのキャッシングサービスは、それぞれのカードの限度枠の範囲内で借り入れた金額を翌月か翌々月の引き落とし日に全額一括払いで返済するものです。

貸金業者側は、最高裁判所が過払い金充当合意があると判断する理由として「借り入れと返済が1対1の関係にない場合」と挙げているため「クレジットカードの1回払いは、借り入れと返済が1対1の関係にあるため、過払い金充当合意は存在しない」と主張してきます。

たしかに裁判所は、1つの取り引きの返済が取り引き全体に対する返済であることを過払い金充当合意を認める理由として挙げていますが、これは判断基準の1つでしかありません。クレジットカードの1回払いが分断の取り引きであると判断するには不十分であるとされ、取り引きは一連であると認められることが多いのが現状です。

最高裁判所は過払い金の充当(取り引き中に発生した過払い金を次の取り引きの返済の一部に充てること)について、「1つの貸し付けをおこなう際に、次の貸し付けがおこなわれることが想定されている場合には、過払い金充当合意が認められる」とも判断しています。つまり、1つの取り引きの際に次の取り引きが想定されているかどうかを重視し、過払い金充当合意の判断の基準としているのです。

クレジットカードを利用する場合、返済方法は一括払い・分割払い・リボ払いなど支払い方法を選ぶことができます。そして、どの支払い方法を選んだとしても、カード利用極度額の範囲で繰り返し借り入れが可能です。

これは「1つの取り引きをおこなう際に、次の取り引きがおこなわれることが想定されている」と判断することができるため、返済と借り入れが1対1で対応することが予定されているクレジットカードの取り引きについては過払い金充当合意の存在が認められると考えられます。

過払い金請求において取り引きが一連か分断か判断される基準

同じ貸金業者で完済と返済を繰り返している場合、これらの取り引きが「一連」なのか、それとも「分断」なのか判断するための基準には次のようなものがあります。

ただし、裁判となった場合でも明確な判断基準があるわけではなく事例ごとに判断されます。

分断となってしまった場合、時効が完成して過払い金が取り戻せなくなるリスクもありますが、どの取り引きが分断なのか個人で判断することは非常にむずかしいため一度専門家に相談してみることをおすすめします。

過払い金充当合意という考え方

同じ貸金業者で完済と借り入れを繰り返していた場合、引き直し計算をする際に1回目の取り引きで発生した過払い金を、次の取り引きで返済の一部に充てることを当事者間で合意(過払い金充当合意)しているかどうかは、取り引きが「一連」なのか「分断」なのかを判断する基準の1つとなります。

過払い金充当合意は、実際に貸金業者との間に合意書などを交わしているというわけではなく、あくまでも「合意しているもの」とみなして扱うことをいいます。

複数の取り引きがある場合「一連の取り引き」と認められるかどうかは、この充当合意が認められるかどうかという点が重要になってきます。

最高裁平成19年2月13日判決では原則として「充当合意は認められない」と判断されましたが、最高裁平成19年6月7日判決では「充当合意は基本契約に含まれている」と判断され、同一の契約の中では一連の取り引きが認められることになりました。

さらに最高裁平成19年7月19日判決でも再度基本契約を締結せずにおこなった取り引きについては過払い金充当合意が認められています。

最高裁判決:平成19年2月13日
事件名 不当利得返還等請求本訴、貸金返還請求反訴事件
裁判年月日 平成19年2月13日
事件番号 平成18(受)1187
法廷名 最高裁判所第三小法廷
判示事項

1 貸主と借主との間で基本契約が締結されていない場合に第1の貸付けに係る債務の各弁済金のうち利息制限法1条1項所定の利息の制限額を超えて利息として支払われた部分を元本に充当すると過払金が発生しその後第2の貸付けに係る債務が発生したときにおける第1の貸付けに係る過払金の同債務への充当の可否

2 商行為である貸付けに係る債務の弁済金のうち利息制限法1条1項所定の利息の制限額を超えて利息として支払われた部分を元本に充当することにより発生する過払金を不当利得として返還する場合において悪意の受益者が付すべき民法704条前段所定の利息の利率

裁判要旨

1 貸主と借主との間で継続的に貸付けが繰り返されることを予定した基本契約が締結されていない場合において,第1の貸付けに係る債務の各弁済金のうち利息制限法1条1項所定の利息の制限額を超えて利息として支払われた部分を元本に充当すると過払金が発生し,その後,第2の貸付けに係る債務が発生したときには,特段の事情のない限り,第1の貸付けに係る過払金は,第1の貸付けに係る債務の各弁済が第2の貸付けの前にされたものであるか否かにかかわらず,第2の貸付けに係る債務には充当されない

2 商行為である貸付けに係る債務の弁済金のうち利息制限法1条1項所定の利息の制限額を超えて利息として支払われた部分を元本に充当することにより発生する過払金を不当利得として返還する場合において,悪意の受益者が付すべき民法704条前段所定の利息の利率は,民法所定の年5分である

最高裁判決:平成19年6月7日
事件名 損害賠償等請求事件
裁判年月日 平成19年6月7日
事件番号 平成18(受)1887
法廷名 最高裁判所第一小法廷
判示事項
カードの利用による継続的な金銭の貸付けを予定した基本契約が同契約に基づく借入金債務につき利息制限法所定の制限を超える利息の弁済により過払金が発生した場合には弁済当時他の借入金債務が存在しなければこれをその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意を含むものと解された事例
裁判要旨
同一の貸主と借主との間でカードを利用して継続的に金銭の貸付けとその返済が繰り返されることを予定した基本契約が締結されており,同契約には,毎月の返済額は前月における借入金債務の残額の合計を基準とする一定額に定められ,利息は前月の支払日の返済後の残元金の合計に対する当該支払日の翌日から当月の支払日までの期間に応じて計算するなどの条項があって,これに基づく債務の弁済が借入金の全体に対して行われるものと解されるという事情の下においては,上記基本契約は,同契約に基づく借入金債務につき利息制限法1条1項所定の制限を超える利息の弁済により過払金が発生した場合には,弁済当時他の借入金債務が存在しなければ上記過払金をその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意を含んでいるものと解するのが相当である

契約書が同一のものか

「一連の取り引き」として認められるために重要なことは、再度借り入れの際に新たに契約書を交わしたかどうかです。

貸金業者からお金を借りる際には最初に基本契約書を取り交わします。現在、多くの貸金業者が一定の借り入れの極度枠を設定し、その範囲内で自由に繰り返し借り入れができるようになっているため、契約書には継続的な貸し借りを想定した内容になっていることがほとんどです。

これにより、いったん完済してから再度借り入れするまでの期間が長い場合、一般的には改めて契約をし直しますが、再度契約書を交わすことなく再度借り入れを開始するケースもあります。この場合、最初に取り交わした基本契約は継続していると判断されます。

裁判所は「一定の極度額の範囲内で自由に借り入れを繰り返すことができる」という趣旨の契約を交わしていた場合、この契約には「過払い金をその後の借入金に充当するという合意(過払い金充当合意)が含まれている」と解釈しています。

つまり、極度額の範囲内で自由に借り入れを繰り返すことのできる契約を交わしていた場合、一連の取り引きと扱われる可能性が高くなります。

ただし、同じ契約書に基づいている場合でも、完済してから次の借り入れまでの期間が長い場合には一連の取り引きであることを否定される可能性もあります。

契約書が同一でない場合

過払い金請求をする際に「一連の取り引き」と認めるのがむずかしくなるのは、それぞれの取り引きごとに基本契約を結んでいる場合です。

完済後に新たに借り入れをする場合、一般的には新たに契約を結び直します。裁判所は、基本契約には過払い金充当合意が含まれており、過払い金が発生したあとに新たに借り入れをした場合には、その支払いに過払い金が充当される(過払金充当合意)ことを認めています。

これは、解約をしない限り当初の取り引きが続いているという考えが妥当であると判断されているからです。ただし、複数の取り引きを事実上1個の取り引きとして扱い、一連の取り引きと主張するためには、次の要件を考慮する必要があります。

もちろん、これが判断基準のすべてというわけではありません。裁判所は、基本的に「契約書が同一でない場合には、分断の取り引きと考えるべき」と判断します。

つまり、完済後に新たに借り入れをする際に契約書を交わしている場合には、原則として一連の取り引きとして利息引き直し計算をすることができず、契約ごとに別の取り引きとして過払い金を計算することになります。

特に取り引きの空白期間が1年以上の場合には、一連の取り引きと認められないケースが多くありました。

しかし最近では、空白期間が1年未満であっても一連の取り引きとはいえず、契約書の返還やカードの失効などを主張立証するように求める裁判官もいます。

また、最初の取り引きの継続期間と空白期間の比を重視し、空白期間が1年未満であっても、最初の取り引きの期間が短いと一連性が認められないと判断する裁判官もいます。

取り引きの空白期間がどのくらい開いていれば分断になるのかの明確な定めはないため、空白期間だけで判断することはできず、最終判断は事柄によって異なるのが現状です。

過払い金請求において一連の取り引きと判断されたケース

完済後に新たに借り入れをする際に契約を結び直していない場合は「一連の取り引き」として認められる可能性が高く、新たに契約を結び直していた場合は「分断の取り引き」として認められる可能性が高いことが多いです。

しかし、完済後に新たに契約を結び直していた場合でも、「一連の取り引き」と認められるケースがあります。たとえば次のようなケースです。

契約内容が同一であった

完済後に借り入れをする際に新たに契約を結び直していたとしても、各取り引きの契約内容に差がなかった場合には、実質的には同一の取り引きと主張できる可能性があります。

つまり、2度目の契約内容が1度目の契約内容と変わらなかった場合は、更新契約としてみなすことができると主張できるということです。

ただし、空白期間が長い場合には一連の取り引きと認められないこともあるため、結び直した契約がある場合は専門家に相談するようにしてください。

金融機関からの接触があった

1回目の取り引きを完済後、次の取り引きをするまでの期間に貸金業者から接触があった場合には、一連の取り引きと認められることがあります。

たとえば、貸金業者からダイレクトメールが届いたことや、勧誘の電話がかかっていたことなどを立証できれば、一連の取り引きと認められる可能性が高くなります。

取り引きが一連か分断かを知りたい方は専門家に相談

同じ貸金業者との間で完済と返済を繰り返している場合、それぞれの取り引きが一連の取り引きか分断の取り引きかによって、過払い金の額に大きな差が生じる場合があります。

しかし、「一連の取り引き」と「分断の取り引き」を判断する明確な基準はなく、一見、分断の取り引きと思われるケースであっても条件によっては一連の取り引きと認められる可能性があるなど、個人で判断するには限界があります。

一連なのか分断なのかをはっきりとさせたい場合には、司法書士や弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

司法書士法人杉山事務所には過払い金に対して実績があるため、借り入れと返済を繰り返していた場合の適切な解決方法を提案させていただきます。無料相談にも応じておりますので、まずはお気軽にご連絡ください。

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