代理で過払い金請求をおこなう条件と注意点
過払い金は原則として、本人でなければ請求できません。特に本人に過払い金を請求する意思がなければ、たとえ家族であっても勝手に請求したり、司法書士や弁護士などの専門家に過払い金請求を依頼することもできません。
しかし、家族や友人が代理で請求できるケースもあります。このページでは、どのようなケースで代理請求できるのかをケース別に解説しています。
委任状があれば代理で過払い金請求ができる
過払い金とは貸金業者に対して払い過ぎた利息のことであり、請求することで取り戻すことができます。
手続きは自分でおこなうことも専門家に依頼することもできますが、原則として借金をした本人でなければ請求することができず、専門家も本人からの依頼をもって手続きを代行します。
しかし、本人に過払い金請求の意思があり委任状を用意した場合には、家族や友人が代理として過払い金を請求できます。
ただし、専門知識のない個人が代理人となって過払い金請求をした場合、貸金業者に足もとを見られ、あらゆる理由をつけて過払い金を全額取り戻せない可能性があります。
そのため、過払い金請求の実績のある司法書士や弁護士などの専門家にまずは無料相談することをおすすめします。
委任状とは
委任状とは、本来であれば自分自身でおこなうべき手続きを、何らかの事情で第三者に依頼するときに必要な書面のことです。
委任状には決められた様式はなく、一般的にパソコンで作成しますが手書きで書かれたものでも書類不備にはなりません。ただし、パソコンで作成した場合でも署名は必ず本人の直筆でなければいけません。
委任状に記載する必要があるものとして、次のようなものが挙げられます。
- 委任する年月日
- 委任者の住所・氏名
- 受任者(代理人)の住所・氏名
- 委任する内容
- 押印(認印もしくは実印)
万が一、代理人が委任状を悪用した場合でも、代理人としておこなった行為は有効となってしまうため、委任する内容はできるだけ具体的に記載する必要があります。
また、代理人を立てるためには必ず本人の意思が必要です。無断で(本人の直筆のサインがなく)代理人になってしまった場合には、契約の効力が生じなくなるため注意が必要です。
代理人は家族や友人だけでなく、司法書士や弁護士などの専門家もなることができます。ただし、本人以外が依頼をした場合には、たとえ専門家であっても過払い金請求はできません。専門家が委任契約を結ぶのは、あくまでも本人が自分の意思で依頼した場合のみ有効です。
原則として本人しか過払い金請求をできない理由
本人しか過払い金請求ができない理由として、大きく3つの理由が考えられます。
- 1.個人情報が取り扱われているため
- 2.本人の意思を尊重した解決ができないため
- 3.過払い金が本人に振り込まれない可能性があるため
1.個人情報が取り扱われているため
過払い金請求をするためには、貸金業者に対して取引履歴の開示を請求する必要があります。
取引履歴は過払い金を計算する上で必須の書類であり、その書類には個人情報に当たる「借り入れ額」や「利息」「返済額」「返済または借り入れした日時」などが記載されています。
そのため、基本的に本人(または委任された者)でなければ開示してもらえません。
2.本人の意思を尊重した解決ができないため
代理人が手続きをした場合、本人が望まない結果になってしまう可能性があります。
交渉が進むうちに請求自体が困難になってしまった場合の判断や、和解交渉でどのタイミングで成立させるかの判断、交渉が難航しているので裁判をするかの判断など代理人では判断しきれなくなることがあります。
過払い金は本来払いすぎたお金であるため、本人の意思をもって返還されることが重要です。
3.過払い金が本人に振り込まれない可能性があるため
過払い金は手続きをした人が指定した口座に振り込まれます。取り戻した過払い金を本人に渡さずに、代理人が着服してしまう可能性があることは否定できません。
金銭トラブルを招いてしまう恐れもあるため、代理人による過払い金請求が認められにくく、基本的に本人が請求をすることになっています。
代理で過払い金請求ができる条件
過払い金は原則として本人に請求する意思がない場合、第三者が勝手に請求することはできません。
しかし、本人の委任状があり、以下の条件を1つ以上満たす場合には専門家でなくても家族や友人が代理人として過払い金を請求ができます。
- 本人に病気やケガがあって動けない場合
- 本人に判断能力がないと判断された場合
- 本人が亡くなって相続した場合
ただし、過払い金請求には専門知識や貸金業者との交渉力が必要です。貸金業者はお金のプロであり、なるべく支払い額を少なくしようとあらゆる理由を主張してきます。
個人で手続きをおこなった場合に手間や時間もかかるに加えて、本来取り戻せるはずの過払い金額が取り戻せなかった事例も多くあります。
より多く取り戻したい場合には、司法書士や弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。杉山事務所では相談は無料でおこなっており、事務所へ相談に来ることがむずかしい場合には出張相談もできますのでお気軽にご連絡ください。
本人に病気やケガがあって動けない場合
本人が病気やケガで自由に動けない場合、本人に過払い金請求する意思があれば、家族などが代理人として過払い金を請求できます。ただし、そのためには本人直筆のサインが書かれた委任状が必要です。
また、本人に代わって家族などが司法書士や弁護士などの専門家に依頼した場合、委任状だけでは過払い金請求を引き受けてくれない場合もあります。
その場合は事務所の規定によりますが、本人の元に出張する、webなどで本人とやりとりするなどに承諾する必要があります。
本人に判断能力がないと判断された場合
認知症や後見人をたてているなど、本人に判断能力がない場合には代理人(成年後見人)が過払い金を請求できます。
成年後見人とは、認知症など判断力がない人や衰えている人を支援するための制度であり、成年後見人になるためには管轄の家庭裁判所に対して申立てをし、裁判所による決定によって初めて効力が発揮されます。
裁判所から成年後見人と認められた場合、本人に代わって財産の管理や契約などをおこなえるようになるため、自らが過払い金を請求することも司法書士や弁護士などの専門家に依頼することもできます。
本人が亡くなって相続した場合
過払い金請求をする権利は相続の対象となります。したがって、亡くなった方の財産は相続放棄の手続きをしない(または遺言による記載がない)限り、借金などのマイナスの財産もすべて相続人へ相続されます。そのため、相続人が代理となって過払い金を請求できます。
相続の場合、過払い金請求をする権利も相続の対象ですが、借金も相続の対象となるため返済中の場合には借金そのものを一度相続する必要があります。戻ってきた過払い金で借金が完済できなかった場合には、相続人が借金を返済する必要があり、さらにブラックリストに載ってしまう可能性もあります。
一般的に過払い金請求権を相続する際には、すでに完済している場合や戻ってきた過払い金で借金が相殺される場合が望ましいとされています。一度相続したものは途中で相続放棄できませんので、過払い金請求をする場合には返済のリスクも考慮する必要があります。
相続対象となる借金がある場合は一度専門家に相談してください。なお、すでに完済されている借金について特に問題はありません。
相続した過払い金を請求するための必要書類
亡くなった方の過払い金を相続人が請求する場合には、借り入れをした本人が死亡していることや、相続人であることを証明する以下の書類が必要です。
- 被相続人(亡くなった方)の出生から死亡までの戸籍謄本
- 相続人全員の戸籍謄本
- 相続人全員の印鑑証明書
- 遺産分割協議書
- 印鑑証明書
- 遺言書
- 相続放棄申述受理証明書(相続放棄する人がいる場合)
なお、司法書士や弁護士などの専門家に依頼した場合は書類作成も代行してくれます。
代理で過払い金請求をするときの注意点
委任状があれば、家族や友人などが本人の代理人となって過払い金を請求できますが、以下の3つの点について注意をする必要があります。
- 取り戻せる過払い金が減ってしまう可能性があること
- 過払い金が140万円以上の場合裁判ができないこと
- 報酬をもらうと罰則の可能性があること
取り戻せる過払い金額が減ってしまう可能性がある
本人が直筆で署名した委任状があれば、家族や友人が代理人となって貸金業者と交渉できます。しかし、貸金業者は過払い金に対する知識があるため、個人で交渉をしようとするとあらゆる理由をつけて低い金額を提示してくることがほとんどです。
例えば、現在借金を返済中である場合に過払い金額が大きいと借金をなくすかわりに過払い金の支払いをしない「ゼロ和解」を提示されることもあります。
一見すると借金がなくなるので良さそうと思いますが、過払い金をすることで借金の完済に加えて手元にお金が残ることも多くあり、ゼロ和解に応じてしまうと損をしてしまうこともあります。
また、交渉だけでなく申請についても過払い金額の算出を間違えてしまったり、必要書類が作成できなかったりすると取り戻せる額が少なくなったり申請自体が取り消しされてしまうこともありますので注意が必要です。
過払い金が140万円以上の場合裁判ができない
過払い金請求は交渉だけではまとまらず裁判にまで発展する可能性があり、その場合、過払い金が140万円以上発生していた場合には、家族や友人が代理人として裁判所に提訴できません。
過払い金が140万円以上発生している場合には、簡易裁判所では扱うことができず、次の地方裁判所に提訴する必要があります。
しかし、地方裁判所で代理人となれるのは弁護士のみと法律で定められているため、たとえ委任状があったとしても家族や友人が代理人になることはできません。
また、過払い金が140万円以下の場合でも、過払い金請求で裁判になり簡易裁判所の判決に納得できなかったときは貸金業者が地方裁判所に控訴する可能性がありますが、この場合でも家族や友人では代理人として対応できません。
さらに、裁判所で代理人となるためには裁判官の許可が必要ですが、裁判官が家族以外の代理人を認めなかった場合も代理人になることができません。
報酬をもらうと罰則の可能性がある
法律では、弁護士や司法書士などの法律の専門家以外の人が、報酬を受け取って過払い金請求をすることを禁止しています。
受け取った場合、2年以下の懲役または300万円以下の罰金という罰則を受ける可能性があります。たとえ本人から受け取ってほしいと強くいわれても断るようにしてください。
貸金業者がわからない場合
本人の代理として過払い金を請求するためには、まずは貸金業者に対して取引履歴を開示してもらう必要があります。
しかし、完済してから時間がたっている場合には、借り入れをした本人がどこから借り入れをしていたのか忘れてしまったり、本人が亡くなっていたりなど、貸金業者がわからないことがあります。
その場合は信用情報機関に問い合わせることで、貸金業者を特定できます。日本の信用情報機関は以下の3つがあります。
- 日本信用情報機構(JICC)
- シーアイシー(CIC)
- 全国銀行協会(KSC)
貸金業者によって登録している信用情報機関が異なりますが、いずれかの信用情報機関に登録しており、複数の信用情報機関に登録している貸金業者もいます。正確な情報を得るためには、すべての信用情報機関に問い合わせることをおすすめします。
本人の代わりに代理で調べるためには、本人直筆の委任状や本人確認書類など提出しなければいけない場合があります。信用情報機関や貸金業者によって必要な書類が異なりますので、事前に必ず調べるようにしてください。
また、借り入れした本人が亡くなっている場合には、相続人であることがわかる書類(戸籍謄本等)、法定代理人の場合には法定代理人であることを証明する書類がそれぞれ別途必要です。代理人が信用情報機関に問い合わせる方法を簡単にまとめると、次のようになります。
日本信用情報機構(JICC)に問い合わせする方法
開示方法 | 郵送・窓口 |
---|---|
手数料 | 【郵送】 任意代理人:1,000円 法定代理人:1,000円 【窓口】 任意代理人:1,000円 法定代理人:500円 |
必要書類 |
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シーアイシー(CIC)に問い合わせする方法
開示方法 | 郵送・窓口 |
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手数料 | 【郵送】 任意代理人:1,000円 法定代理人:1,000円 【窓口】 任意代理人:1,000円 法定代理人:500円 |
必要書類 |
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全国銀行協会(KSC)に問い合わせする方法
開示方法 | 郵送 |
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手数料 | 任意代理人:1,000円 法定代理人:1,000円 |
必要書類 |
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信用情報機関により、開示方法や必要書類などが異なるため、問い合わせをする場合には、事前に必ず各信用情報機関に確認してください。
過払い金額を知りたい場合
過払い金額を調べるためには貸金業者から取引履歴を取り寄せる必要があります。本人の代理で取引履歴を取り寄せるには、次のような書類が必要です。
- 代理人の本人確認書類
- 委任状(本人が署名し、実印を押印したもの)
- 本人の印鑑登録証明書
なお、本人が亡くなっている場合には、相続人であることを証明できる書類(戸籍謄本等)、法定代理人の場合には、法定代理人であることを証明する書類が必要です。
また、貸金業者によって必要な書類が異なる可能性がありますので必ず事前に貸金業者に確認してください。
家族以外の代理もできる
過払い金請求の手続きをするために必要な資格はありません。家族でなくても友人や恋人など、委任状があれば代理人として貸金業者と交渉することは可能です。
ただし、裁判になった場合、裁判の代理人として認められるかどうかは裁判官によって異なります。そのため、家族以外が代理人となった場合、代理が認められない可能性もあります。
また、たとえ家族であっても過払い金が140万円以上発生していた場合には、代理人は弁護士のみ認められているため、裁判の代理人にはなれません。過払い金が140万円以上発生している場合には簡易裁判所では扱うことができず、地方裁判所に提訴する必要があります。
自分以外の過払い金請求を代理でおこなう前に
過払い金請求は、原則として本人でなければ請求できません。ただし、本人に過払い金を請求する意思があり条件が満たせば、家族や友人が代理で請求することができます。
仮に、過払い金を請求しない理由が「大変そうだから」「面倒だから」「よくわからないから」というような場合には、家族や友人が司法書士や弁護士などの専門家に相談することで、専門家の方から本人に丁寧に説明をすることもできます。
また、家族や友人が代理となって過払い金を請求するよりも、専門家が請求した方が、より多くの過払い金を取り戻すことができます。本人の代理で過払い金請求をする前に、ぜひ専門家に相談してください。
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