債務整理と家・車のローンの関係、債務整理後にローンを組む方法
借金を減額したり、返済期間を延長したりして債務者の経済的負担を軽減する債務整理。非常に効果的な方法ですが、「住宅ローンや自動車ローンも対象になるのか」「債務整理をするとローンが組めなくなるのでは」と不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
実際には、債務整理の種類によって住宅や自動車を手放さずに済んだり、逆に必ず手放さなければならないケースもあります。また、債務整理後はローンを組みにくくなりますが、一定期間が経過すれば再び利用することも可能です。債務整理を検討するときは、このようなローンとの関係をふまえ、計画的におこなうことが欠かせません。
返済の負担から少しでも早く解放されるよう、債務整理とローンの関係を知り、自分に合った方法で借金問題を解決しましょう。
返済中の住宅ローンや車のローンの債務整理
ローンの返済がむずかしくなると、住宅や自動車を売却したり、債務整理をおこなったりして手放すケースが多いです。しかし、債務整理の種類によっては住宅自動車を手元に残せることもあるので、詳しい方法を知っておきましょう。
住宅ローンが払えない人は
ローンを組んで購入した住宅には抵当権が設定されており、完済するまで正式に自分の所有物にはなりません。ローンの返済ができなくなると、金融機関などは裁判所に申し立てて住宅を回収・売却し、ローンの残債を取り戻そうとします。
これを競売といい、強制的におこなわれるため期日になれば必ず住宅を明け渡さなければなりません。ただし、ローンによって購入した住宅を処分できる場合は、任意売却することで競売を避けられる可能性もあります。
任意売却とは、債権者の合意を得たうえで、ローンを完済できない価格でも住宅などを売却し、抵当権を外してもらう売却方法のことです。売却代金はローンの返済にあて、残った借金は任意整理するのが一般的です。
強制的におこなわれる競売に対し、任意売却にはさまざまなメリットがあります。たとえば住宅の場合、競売物件は裁判所から公告が出されるため、周囲に苦しい返済状況を知られてしまいます。これに対し、任意売却は通常の不動産売買と同じく扱われるため、周囲に知られる心配がありません。
また、割安な価格で売られる競売と違い、任意売却は市場価格で売り出せるため、より高額で売れる可能性があります。住宅を明け渡す日程も融通がきき、学校や仕事など都合に合わせたスケジュール調整も可能です。さらに、競売が売却代金をすべて回収されるのに対し、任意売却では売却代金から引っ越し費用の一部を受け取れることもあります。
このように、任意売却には多くのメリットがあるため、競売が決まる前に任意売却、および任意整理を検討したほうが安心です。悩んでいるうちに競売が決まってしまう可能性もあるので、ローンが払えなくなったらお早めに当事務所までご相談ください。
ローン返済中の家と車を残したい人は
ローンは返済すべきお金とはいえ、払えなくなったときに住宅や自動車を回収されるのは避けたいところです。このような場合は、ローン以外の借金について、任意整理や個人再生などの債務整理をおこないましょう。
ほかの借金を減額すれば経済的な余裕ができ、ローンを返済して住宅や自動車を手放さずに済む可能性もあります。
家と車を両方のこせる任意整理
住宅も自動車も手放したくない場合は、任意整理がおすすめです。任意整理とは、貸金業者などの債権者と直接交渉し、合意のうえで借金の減額や返済期間の延長などを決める手続きを指します。
任意整理の対象とする借金を選べるため、住宅や自動車以外の借金のみ減額すれば住宅や自動車を回収される心配がありません。
ほかの借金を減額できれば返済の負担が減るため、その分をローンの返済にあてましょう。ただし、任意整理できるかどうかは債権者との交渉次第です。債権者を納得させられなければ借金は減額できず、結局返済がむずかしいままという事態も考えられます。
巧みな交渉術や豊富な経験などが必要になるため、専門家である弁護士や司法書士に手続きをお任せいただいたほうが安心です。
家を残して大幅に借金減額できる個人再生
住宅を残したまま借金を大幅に減額したいという場合は、個人再生を検討しましょう。個人再生とは、裁判所に申し立てて借金を5分の1にまで減額し、3~5年かけて残りの借金を返済していく手続きのことです。
個人再生には住宅資金特別条項(住宅ローン特則)という特則があり、住宅ローン以外の借金だけを減額することができます。
住宅ローンについてはこれまで通り返済が必要ですが、債務整理をしても住宅を失う心配がありません。任意整理よりも大幅に借金を減額できるため、ローン以外に多額の借金をしている場合におすすめです。
なお、個人再生には自動車ローンに関する特則はなく、債務整理の対象になってしまいます。住宅は残せるものの、ローン返済中の自動車は手放す必要があるためご注意ください。
個人再生で車を残せるケース
個人再生では基本的に自動車を残すことができませんが、それはローン返済中の話です。個人再生は自己破産と違って財産が没収されないため、ローンの支払いが終わって自分の所有物となった自動車を失うことはありません。
また、ローン返済中だったとしても、場合によっては自動車を残せるケースもあります。たとえば、債権者との間で自動車ローンを支払うことに同意し、自動車を回収しないようにしてもらう別除権協定を結んだ場合です。
別除権協定には裁判所の許可が必要で、タクシーの運転手や運送業者など、自動車が生活必需品になっている場合に認められやすいです。
債務整理後に住宅ローン・自動車ローンを組めるのか
債務整理をおこなうと、その事実が事故情報として信用情報機関に登録されてしまいます。信用情報機関とは、個人の借り入れや返済履歴、年収などさまざまな情報を管理している機関のことです。金融機関や貸金業者などは、この信用情報をもとにお金を貸すかどうかの審査をしています。
債務整理は、借金を返済できなかったときにとる手段です。信用情報に債務整理をしたことが登録されると「この人はお金を貸しても返済できない」と見なされ、いわゆるブラックリストに載ってしまいます。このため、債務整理後に新たにローンを申し込んでも、審査で断られる可能性が高いのです。
ただし、二度とローンを組めないわけではありません。信用情報に登録されるのは債務整理から一定期間が経過するまでなので、しばらく経てば新たに住宅ローンや自動車ローンを組むこともできます。
債務整理後いつになったらローンを組めるのか
新たなローンを組むためには、債務整理から一定期間が経過し、信用情報の事故情報が消えなければなりません。信用情報を管理する機関は主に3つあり、それぞれ債務整理の事故情報が消えるまでの期間が異なるのでご注意ください。
CIC(株式会社シー・アイ・シー)では
CIC(株式会社シー・アイ・シー)は、主にクレジットカード会社などが加盟している信用情報機関です。ローンやクレジットカードなどに関する申込情報、利用履歴などを取り扱っており、自己破産や返済の遅れなどがあれば事故情報として5年間登録されます。
任意整理・個人再生の場合は登録されませんが、債務整理の前に3カ月以上延滞していれば、その時点で登録されてしまいます。登録機関は、自己破産と同じく5年間です。
JICC(日本信用情報機構)では
JICC(日本信用情報機構)には、金融機関や貸金業者、保証会社など幅広い企業が加盟しています。契約内容や返済状況のほか、債務整理の取引事実も登録されており、任意整理・個人再生・自己破産のいずれも登録期間は5年間です。
KSC(全国銀行個人信用情報センター)では
KSC(全国銀行個人信用情報センター)は、その名の通り銀行や信用金庫などが加盟する信用情報機関です。取引情報はもちろん官報情報も登録されており、官報に掲載される個人再生・自己破産は10年間にわたり事故情報として残ります。
任意整理であれば、事故情報として登録はされません。ただし、返済が遅れたときに保証会社が代位弁済をしていれば、5年間は登録されるのでご注意ください。銀行等の任意整理をする場合は、保証会社が代位弁済するので代位弁済の情報が登録される可能性が高いです。
ブラックリストに載る期間まとめ
CIC | JICC | KSC | |
---|---|---|---|
任意整理 | 約5年 ※1 | 約5年 | 約5年 ※2 |
個人再生 | 約5年 ※3 | 約5年 | 約10年 |
自己破産 | 約5年 | 約5年 | 約10年 |
※1:債務整理前に3カ月以上延滞していた場合
※2:保証会社による代位弁済があった場合
※3:債務整理前に3カ月以上延滞していた場合
新たに住宅ローン・自動車ローンを組む際の注意点
信用情報の事故情報が消え、新たにローンを組むときには、いくつか注意したいポイントがあります。スムーズにローンを組むためにも、事前に確認しておきましょう。
債務整理の対象になった金融機関を選ばない
債務整理から一定期間が経過したのに、ローンを申し込んでも断られてしまうことがあります。これは、債務整理をおこなった金融機関や貸金業者、またはそのグループ会社などにローンを申し込んだ場合によく見られるケースです。
一定期間経過後に事故情報が消えるのは、あくまでも信用情報の話であり、債務整理をおこなった債権者はずっと情報を管理している可能性があります。
このため、何年経とうがローンを申し込むと過去の債務整理に気づき、審査で断られることも少なくありません。新たにローンを申し込む場合は、なるべく債務整理をした債権者は避けるようにしましょう。
ローンを組む前に「個人情報の開示請求」をする
ローンを組むときは、信用情報機関に対して個人情報の開示請求をおこなうことをおすすめします。個人情報の開示請求とは、信用情報機関に自分の情報がどのように登録されているか確認できる制度のことです。
自分ではもう事故情報が消えたと思っていても実際には消えておらず、ローンを申し込んでも審査で断られる可能性があります。
ローンの申し込み情報自体も信用情報に登録される場合があるため、むやみに申し込むのはおすすめできません。金融機関などから警戒され、さらにローンを組みにくくなるおそれもあります。
このため、個人情報の開示請求によって事前に状況を確認したほうが安心なのです。まだ事故情報が消えていなければローンを組めない可能性が高いので、しばらく経ってから申し込みましょう。
住宅ローンは一括審査を利用する方法もある
住宅ローンを組みたい場合は、直接金融機関などに申し込むのではなく、一括審査サービスを利用するという方法もあります。一括審査とは、複数の金融機関に同時に仮審査を申し込めるサービスのことです。
仮審査に通ると本審査を受けることができ、ローンを組める可能性があるので、仮審査に通った金融機関に申し込みましょう。
複数の金融機関を対象に一括審査することでローンを組める可能性のある相手を見つけやすくなり、時間や手間を節約できます。ただし、仮審査に通っても必ずローンを組めるわけではなく、本審査の結果次第となるのでご注意ください。
事故情報があってもローン審査が通る場合もある
信用情報に債務整理の事実が載っていると、ローンを申し込んでも断られる可能性が高いです。しかし、ローンの審査基準は金融機関や貸金業者ごとにさまざまであり、中には事故情報があってもローンを組めるところもあります。
具体的にどのようなケースでローンを組める可能性があるのか、詳しく見てみましょう。
借入比率が低い
住宅ローンを組むにあたり、頭金を十分に準備できた場合はローンを組みやすくなります。頭金が多いと借りるお金も少なくて済み、返済しやすいと判断されるためです。
ただし、いくら借入比率が低くても、ほかの借金の返済中であるなど債務がある場合は審査で断られる可能性が高まるのでご注意ください。
債務整理をした後にローンを組むには、債務整理をしたものの借金を完済し、十分な頭金を準備できるだけの経済基盤を築けたとアピールすることがポイントです。
勤めている企業の信用度が高い
サラリーマンの場合、勤めている企業の社会的な信用度が影響することも多いです。大企業や上場企業は安定かつ継続した収入が期待できるため、返済能力を認められてローンを組める可能性が高まります。
任意整理からそれなりの期間が経過している
債務整理をしたという事故情報が消えるには5~10年ほどかかり、それまではローンの審査に通りにくくなることが多いです。しかし、債務整理からある程度の期間が過ぎていれば、生活の再建が進んで返済能力が回復したと判断され、ローンを組める可能性もあります。
まれなケースではありますが、可能性がゼロではないので試しに申し込んでみるのもひとつの方法です。ただし、ローンに申し込んだという情報も信用情報に登録されることがあります。
申し込みを繰り返していると、審査に落ち続けている=問題がある申し込み者なのではないかと警戒され、ますます審査に通りにくくなる可能性もあるためご注意ください。
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ローンは、大きな買い物などをするときに非常に頼りになる存在です。借金を減らすためとはいえ、ローンへの影響が心配で決断できなくても無理はありません。しかし、ローンを重視するあまり、借金に苦しみ続ける道を選ぶのは本末転倒です。
悩んでいるうちに返済がむずかしくなり、住宅を競売にかけられたり信用情報に延滞の事故情報が載ったりするおそれもあります。そうなれば、どのみちローンどころではなくなってしまうでしょう。借金問題は放置していても自然に状況が良くなることはないため、まずは債務整理で現在の借金を完済することが先決です。
債務整理の種類によっては、住宅や自動車を手放さずに借金を減らせることもありますし、債務整理をしたからといって二度とローンが組めないわけでもありません。少しでも早く行動を起こせば、より良い方法で借金問題を解できる可能性もあります。
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