破産財団(はさんざいだん)とは?

破産財団とは、破産者の財産のうち、破産手続において破産管財人がその管理および処分をする権利を専属的に有するものを指します。債権者への公平な弁済を実現するための重要な概念であり、破産法の根幹をなす制度です。

破産財団の基本概念

破産財団は、債務者が抱える多額の債務を処理するための破産手続において中心的な役割を果たします。債権者間の公平な分配を実現するため、破産者の財産を一元的に管理・処分する仕組みです。

定義 破産者の財産で、破産管財人が管理・処分する権利を持つもの
法的根拠 破産法第34条(破産財団の範囲)
目的 債権者への公平かつ平等な弁済を実現するため

破産財団は破産手続開始決定により自動的に形成され、破産管財人の管理下に置かれます。破産者はこれらの財産に対する管理処分権を失うことになります。

破産財団の構成要素

破産財団には、破産者が所有するさまざまな財産が含まれます。法律上の規定により、その範囲は以下のように定められています。

  • 破産手続開始時に破産者が有する一切の財産
  • 破産手続開始後に破産者が取得した財産
  • 否認権の行使によって取り戻された財産
  • 相殺禁止の規定によって相殺できなくなった債権
  • 不動産、動産、預貯金、有価証券などの有形・無形の財産
  • 破産者が有する債権(貸金や売掛金など)

これらの財産は破産管財人によって調査・評価され、換価(現金化)されて債権者への配当に充てられます。破産者の財産状況によって、破産財団の規模や価値は大きく異なります。

破産財団に含まれない財産

全ての財産が破産財団に含まれるわけではありません。破産者の生活再建や社会復帰を可能にするため、一定の財産は破産財団から除外されます。

差押禁止財産 生活に必要な衣服、寝具、家具、調理器具など日常生活に欠かせない財産
自由財産 99万円以下の現金(自由財産拡張の申立てにより増額可能)
特定の給与 破産手続開始後の労働の対価として得た給与の一部(生活維持に必要な部分)
特定の権利 慰謝料請求権など一身専属的な権利、年金受給権の一部

これらの除外規定により、破産者は最低限の生活を維持しながら経済的再生を図ることが可能となります。自由財産の範囲は裁判所の判断により柔軟に認められる場合もあります。

破産財団の管理と換価

破産管財人は、破産財団を構成する財産を適切に管理し、最も有利な方法で換価する責任を負います。その過程は以下のように進められます。

  1. 財産の調査・評価と財産目録の作成
  2. 換価可能な財産の売却(不動産、車両、貴金属など)
  3. 債権の取り立て(貸付金、売掛金など)
  4. 否認権の行使(詐害行為や偏頗行為の取消し)
  5. 法的争訟の遂行(訴訟や調停など)

破産管財人は、債権者全体の利益を考慮しながら、最も効率的かつ公正な方法で破産財団を管理・換価します。通常、市場価値を反映した適正価格での売却が目指されます。

破産財団の分配方法

破産管財人によって換価された破産財団は、法律で定められた順位に従って債権者に分配されます。この分配過程は公平性と透明性が重視されます。

配当の順位
  • 財団債権(破産手続費用、管財人報酬など)
  • 優先的破産債権(租税債権、労働債権など)
  • 一般破産債権(通常の借入金、クレジットカード債務など)
  • 劣後的破産債権(利息、遅延損害金など)
配当の方法 中間配当、最後配当、追加配当など状況に応じた配当方法が選択される
配当の時期 破産管財人が換価・回収した財産から管財事件の進行に応じて随時行われる

上位の債権が完全に弁済されない限り、下位の債権者には配当がなされません。一般的に、個人の破産では一般破産債権への配当率は低いことが多く、無配当となるケースも少なくありません。

破産財団と債務者の生活再建

破産手続は債務者の経済的再生を目的としており、破産財団の取り扱いも債務者の生活再建を考慮したものとなっています。

  • 自由財産制度により、一定額の現金や生活必需品は手元に残すことができる
  • 給与所得者の場合、生活維持に必要な給与の一部が破産財団から除外される
  • 住宅ローンの場合、個人再生など他の債務整理手続の検討も可能
  • 破産免責により、破産財団から弁済できなかった債務は原則として免除される

破産手続は債務者にとって経済的な「新しいスタート」を切るための制度です。破産財団に含まれない財産を活用して、債務者は生活を立て直すことができます。

破産財団に関する注意点

破産財団に関しては、以下の点に特に注意が必要です。これらの問題は破産手続の円滑な進行や免責判断に影響することがあります。

財産の隠匿・損壊 破産財団に含まれるべき財産を隠匿・損壊すると、免責不許可事由となり刑事罰の対象にもなる
破産前の処分 破産前に財産を処分した場合、否認権行使の対象となる可能性がある
相続財産 破産手続中に相続が発生した場合、相続財産も破産財団に含まれる(相続放棄の検討が必要)
自由財産の拡張 特別な事情がある場合、自由財産の拡張申立てを行い、破産財団から除外される財産を増やせる可能性がある

破産手続においては、誠実な対応が何よりも重要です。財産の隠匿や虚偽の申告は厳しく罰せられるため、全ての財産を正直に申告することが必要です。

よくある質問

いいえ、給与収入は全額が破産財団に組み込まれるわけではありません。

破産手続開始後の労働の対価として得た給与については、生活維持に必要な部分は破産財団から除外されます。通常、手取り収入から最低生活費を差し引いた額が破産財団に組み込まれる対象となります。

ただし、破産手続開始前に既に発生していた給与債権は原則として破産財団に含まれますので注意が必要です。

住宅や車両は原則として破産財団に含まれますが、状況によって取り扱いが異なります。

住宅については、住宅ローンが残っている場合は任意売却や住宅資金貸付者との協議による解決が検討されます。車両については、仕事に必要不可欠な場合や価値が低い場合は、管財人の判断で換価されないこともあります。

ただし、高額な不動産や車両は原則として換価の対象となり、破産者は所有権を失うことになります。具体的な取り扱いは事案ごとに異なりますので、専門家への相談が必要です。

はい、破産手続開始後に相続により取得した財産も、原則として破産財団に含まれます。

これは、破産法が破産手続開始後に破産者が取得した財産も破産財団に組み込むと定めているためです。破産手続中に相続が発生した場合、速やかに破産管財人に報告する義務があります。

ただし、相続の放棄を検討することも可能です。相続放棄は相続開始を知ってから3か月以内に家庭裁判所に申述する必要がありますので、相続が発生した場合は早めに対応することが重要です。

自由財産の拡張申立てとは、法律で定められた自由財産(99万円)を超えて、破産財団から除外される財産の範囲を広げる手続きです。

病気や障がいがある場合、高齢である場合、扶養家族が多い場合など、特別な事情がある破産者は、裁判所に対して自由財産の拡張を申し立てることができます。

申立てが認められれば、通常よりも多くの財産を手元に残すことが可能になり、生活再建がスムーズに進められます。具体的な申立方法や認められる条件については、専門家にご相談ください。

まとめ

破産財団は、破産手続において債権者への公平な弁済を実現するために設けられた重要な制度です。破産者の財産を一元的に管理・処分することで、債権者間の平等な取り扱いを確保しています。

破産財団には、原則として破産者の全ての財産が含まれますが、生活再建のために自由財産や差押禁止財産は除外されます。破産管財人は破産財団を適切に管理・換価し、法定の順位に従って債権者に分配します。

破産手続を検討する際には、どの財産が破産財団に含まれ、どの財産が手元に残せるのかを正確に理解することが重要です。財産状況や債務状況は個人によって大きく異なるため、専門家のアドバイスを受けながら最適な債務整理方法を選択することをおすすめします。

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