自由財産(じゆうざいさん)とは?

自由財産とは、自己破産の手続きを行った場合でも、債務者が手元に残すことができる財産のことです。

破産手続きでは原則として債務者の財産は換価され、債権者に配当されますが、この自由財産制度によって最低限の生活再建のための財産を確保できます。

近年は自由財産の範囲が拡大されており、債務者がより円滑に生活を再建できるよう配慮されています。

自由財産の基本概念

自由財産制度は、債務者が自己破産後も人間らしい生活を送り、再出発するために欠かせない制度です。

破産法では、債務者の財産は原則として破産管財人が管理・換価しますが、一定の財産については債務者が引き続き保有できると定めています。

定義 自己破産後も債務者が保持できる財産
法的根拠 破産法第34条、第99条第1項など
目的 債務者の最低限の生活保障と円滑な生活再建の支援
運用 裁判所の運用基準により具体的範囲が決定される

この表は自由財産制度の基本的な考え方をまとめたものです。この制度により、債務者は破産しても最低限の生活基盤を確保できます。

自由財産として認められるもの

自由財産には法律で明確に定められているものと、裁判所の運用によって認められているものがあります。

以下に主な自由財産の種類をまとめました。

  • 生活に必要な家財道具(家具、電化製品、食器など)
  • 日常的に使用する衣類や身の回り品
  • 通勤や生活に必要な自動車(一定の条件下・価値制限あり)
  • 仕事や職業に必要な道具や機械
  • 現金・預貯金(上限額あり)
  • 一定額以下の生命保険の解約返戻金
  • 債務者やその扶養家族の生活保障のための保険金
  • 債務者本人やその家族が受け取る年金
  • 99万円以下の特定の財産(裁判所による個別判断)

これらの自由財産は、債務者が破産しても失わずに済むものですが、具体的な範囲や価値の上限は裁判所によって異なることがあります。

自由財産の金額基準

自由財産として認められる金額は裁判所によって異なりますが、一般的な基準を紹介します。

以下の表は、東京地方裁判所の運用を参考にした基準です。

現金・預貯金 99万円まで(原則として)
自動車 価値が20万円程度までの車両(通勤や生活に必要な場合)
生命保険の解約返戻金 原則として20万円程度まで
住居用敷金 破産申立て時の居住物件の敷金は自由財産として取り扱われることが多い
ペット ペット自体は自由財産だが、高額な純血種などは対象外の場合もある

この表は一般的な基準を示したものですが、実際の金額は裁判所や個別のケースによって異なります。最新の基準については専門家にご確認ください。

自由財産拡張の申立て

通常の自由財産の範囲を超えて財産を手元に残したい場合は、自由財産の拡張申立てが必要です。

この申立ては、特別な事情がある場合に認められる可能性があります。

申立ての定義 通常の自由財産の範囲を超えて財産を保持できるよう裁判所に求めること
申立ての時期 破産手続き開始決定前または管財事件選任後に行う
認められる例
  • 持病の治療費が必要な場合
  • 高額な医療費が継続的に必要な場合
  • 自営業継続に必要な高額設備がある場合
  • 生活再建に特別な資金が必要な場合
判断基準 債務者の生活状況、職業、健康状態、家族構成などを総合的に考慮

この表は自由財産拡張申立ての概要をまとめたものです。申立ては必ず認められるものではなく、個別の事情に基づいて裁判所が判断します。

自由財産制度の意義

自由財産制度は単に債務者の財産を保護するだけでなく、社会的にも重要な意義を持っています。

この制度の多面的な意義について解説します。

生活再建の支援 最低限の生活基盤を確保し、新たな出発を後押しする
人権と尊厳の保護 債務者が人間としての尊厳を保ちながら生活できるようにする
社会保障的機能 債務者とその家族が生活保護に頼らずに生活できるよう支援する
社会経済的安定 債務者の生活崩壊を防ぎ、社会の安定に寄与する
破産制度の利用促進 適切な場合の自己破産を躊躇させない効果がある

この表は自由財産制度が持つ様々な意義をまとめたものです。この制度によって、債務者は尊厳を保ちながら生活再建を図ることができます。

自由財産に関する注意点

自由財産制度を利用する際には、いくつかの重要な注意点があります。

これらを理解することで、破産手続きをスムーズに進めることができます。

地域による差異 裁判所によって自由財産の範囲や金額基準が異なる場合がある
財産の隠匿禁止 財産を隠す行為は免責不許可事由となり、借金が免除されない可能性がある
破産後の取得財産 破産手続き開始決定後に取得した財産は原則として自由財産となる
換価価値の判断 財産の価値は市場価値ではなく、中古品としての換価価値で判断される
基準の変動 社会情勢や法改正により自由財産の範囲が変更される可能性がある

この表は自由財産に関する主な注意点をまとめたものです。特に財産の隠匿は重大な問題となりますので、全ての財産を正直に申告することが重要です。

他の債務整理手法との比較

自由財産の概念は主に自己破産で問題となりますが、他の債務整理手法と比較することで理解が深まります。

各債務整理手法における財産の取扱いの違いを見てみましょう。

任意整理 財産の処分は原則不要で、全ての財産を維持できる。自由財産の概念は適用されない。
特定調停 財産の処分は原則不要。全ての財産を保持したまま債務の返済計画を立てる。
個人再生 財産は原則として処分不要だが、一定価値以上の財産がある場合は清算価値保証原則が適用される。
自己破産 自由財産以外の財産は原則として換価・配当される。自由財産のみが債務者の手元に残る。

この表は各債務整理手法における財産の取扱いの違いを比較したものです。自己破産以外の手法では基本的に財産を維持できる点が大きな違いです。

よくある質問

自由財産として認められる現金の額は、裁判所によって異なります。

東京地方裁判所では一般的に99万円までとされていますが、地域によってはこれよりも少ない金額が設定されている場合があります。

また、債務者の状況(病気や障害の有無、家族構成など)によっても認められる金額が変わる可能性があります。

お住まいの地域の基準については、司法書士や弁護士などの専門家に確認することをおすすめします。

事業用の車両や機械設備が自由財産として認められるかどうかは、その必要性や価値によって判断されます。

比較的安価な工具や設備(価値が20万円程度以下)であれば、生計を維持するために必要不可欠であると認められやすいです。

しかし、高額な設備や車両の場合は、原則として自由財産の範囲を超えるため、自由財産の拡張申立てが必要となります。

拡張申立ての際は、その設備がなければ事業継続や生計維持が困難であることを説明する必要があります。

マイホーム(不動産)は原則として自由財産にはなりません。

自己破産する場合、不動産は換価され、債権者への配当に充てられるのが原則です。

住宅を残したい場合は、個人再生手続きの「住宅資金特別条項」の利用を検討するか、第三者(親族など)に買い取ってもらい、賃貸として住み続ける方法などを検討する必要があります。

ただし、住宅ローンがある場合は、債権者が抵当権を実行して競売にかけるケースが多く、いずれにしても自己破産では住宅を維持することは困難です。

将来受け取る保険金や退職金が自由財産になるかどうかは、その性質や時期によって異なります。

生命保険の死亡保険金や医療保険の給付金など、債務者やその家族の生活保障を目的とするものは、一定額まで自由財産として認められる可能性が高いです。

退職金については、破産手続き開始決定後に退職して受け取った場合は自由財産になる可能性が高いですが、破産手続き開始前に既に受給権が確定している場合は破産財団に組み込まれる可能性があります。

具体的な判断は個別のケースによって異なるため、専門家への相談をおすすめします。

まとめ

自由財産制度は、自己破産をした債務者が最低限の生活を維持し、再出発するための重要な保障制度です。法律で定められた財産に加え、裁判所の運用によって認められる財産があり、近年はその範囲が拡大される傾向にあります。

自由財産として一般的に認められるのは、生活に必要な家財道具、衣類、一定価値以下の自動車、仕事に必要な道具、そして99万円程度までの現金や預貯金などです。特別な事情がある場合は、自由財産拡張の申立てにより、通常より多くの財産を手元に残せる可能性もあります。

ただし、自由財産の範囲や金額基準は裁判所によって異なることがあり、財産を隠す行為は免責不許可事由となる点に注意が必要です。また、自己破産以外の債務整理手法では、基本的に財産処分は不要という大きな違いがあります。

自己破産を検討している方は、どの財産が自由財産として残せるのか、また他の債務整理手法と比較してどのような選択が最適かを検討することが重要です。杉山事務所では、ご相談者様の状況に合わせた最適な債務整理方法をご提案しております。お気軽に無料相談をご利用ください。

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