個人再生の手続きの流れとかかる期間・必要書類
個人再生とは、裁判所に申し立てをおこない、借金を大幅に減額してもらう方法のことです。裁判所に認められた再生計画にしたがい、数年かけて残りの借金を返済したり、マイホームを手放さずに借金を減額したりするなどのメリットがあります。
非常に効果的な方法なのですが、一方で手続き内容がむずかしいため、申し立てを断念してしまう方も少なくありません。このため、個人再生を考えている場合は、弁護士や司法書士にご依頼いただいたほうが安心です。
また、借金の状況によっては、裁判所を通さずに借金減額ができる任意整理など、個人再生以外の解決方法をとれる可能性もあります。より良い方法で借金を減額できる場合もあるため、借金でお悩みの方は一度当事務所にご相談ください。
個人再生の流れとかかる期間
個人再生の手続きには、小規模個人再生と給与所得者等再生という2つの手続きが存在します。名称は異なりますが、どちらも裁判所を通して借金を減額するという基本的な流れは同じです。
小規模個人再生とは、主に個人事業主などを対象とした手続きで、借金の総額が5000万円以下であること、継続的に収入を得られることなどの条件を満たさなければなりません。一方の給与所得者等再生は、主にサラリーマンを対象としており、小規模個人再生の条件に加えて給料などの収入の金額が安定していることも求められます。
どちらの個人再生手続きも、実際に申し立てる場合は裁判所によって手続きの進め方やスケジュールが異なるのでご注意ください。大きく異なるポイントは、個人再生委員の選任があるかどうか(選任される場合は個人再生委員との面接があるかどうか)、積立トレーニング(履行テスト)が必要かどうかという2点です。積立トレーニングについては、期間がどれくらいかという点にも違いがあります。
たとえば、東京地方裁判所では、手続きにあたり個人再生委員を選任するのが原則です。個人再生委員が選任されると一般的には6ヵ月ほどで再生計画が認可されますが、選任されない場合は3カ月ほどで認可されるケースもあります。手続きにかかる期間を把握するためにも、個人再生委員や積立トレーニングについて詳しく知っておきましょう。
個人再生委員とは
個人再生委員とは、個人再生を申し立てた人の指導や監督をおこなったり、裁判所へ意見を述べたりする人物のことです。個人再生の手続きでは、再生計画案と呼ばれる借金の返済についてまとめた書類の作成や、申し立て人の収支・負債状況の把握、積立トレーニングの管理などさまざまな作業をこなす必要があります。
裁判所は日々さまざまな業務に対応しているため、申し立て人ごとに細かい作業をおこなうのは簡単ではありません。そこで、申し立てごとに個人再生委員を選任し、個別に対応させて手続きをスムーズに進めようとしているのです。
誰が個人再生委員になるかは裁判所により異なりますが、一般的には経験豊富な弁護士が選ばれます。すでに弁護士が代理人となっている場合は、十分なサポートが期待できるため個人再生委員を選任しない裁判所も多いです。裁判所によっては、弁護士をたてているかどうかにより、手続きにかかる費用が大きく変わることもあるのでご注意ください。
積立トレーニング(履行テスト)とは
積立トレーニング(履行テスト)とは、裁判所が認めた再生計画案について、実際に返済できるのかどうか検証することを指します。個人再生では、減額された借金を3~5年という長い期間にわたり返済していかなければなりません。
どれほど立派な再生計画案を作成しても実行できなければ意味がないため、正式に個人再生を認める前に返済能力を確認しているのです。積立トレーニングでは、個人再生が認められた後に支払う1カ月分の返済額と同じ金額を、個人再生委員が開設した口座に振り込まなければなりません。
振り込む期間は裁判所ごとに異なり、たとえば東京地方裁判所では6カ月間にわたっておこなわれます。期間中に振り込みが遅れると、返済能力が疑われて個人再生が認められにくくなるのでご注意ください。
東京地方裁判所の場合の個人再生手続きの流れ
東京地方裁判所の場合、当事務所に手続きを依頼いただいた場合の具体的な流れは次の通りです。書類の提出期限が長かったり、個人再生委員の選任が必須だったりすることもあり、一般的には申し立てから手続きが認められるまで約半年ほどかかります。
1.ご相談
まずは借金の状況などについて、電話・メールにて当事務所までご相談ください。担当の司法書士が、借金に関する悩みや不安などを直接お伺いします。
2.委任契約
個人再生手続きをご依頼いただく場合、司法書士が相談者様のために活動する内容を定めた委任契約を締結させていただきます。
個人再生には30万円以上の費用がかかりますが、個人再生が認められれば費用分をカバーすることは十分に可能です。費用が心配な場合は、委任契約を締結する前にご確認ください。
3.受任通知の送付・取引履歴の開示請求
委任契約を締結すると、当事務所より債権者にあてて受任通知を発送します。受任通知とは、相談者様の借金について、当事務所が介入する旨を記載した書類のことです。
受任通知が届くと、債権者は債務者に対してそれ以上取り立てをすることができません。また、受任通知の送付とあわせ、債権者に対し取引履歴の開示請求もおこないます。
4.債権調査・過払い金返還請求
開示請求により借金の時期や金額、返済状況などが確認できたら、引き直し計算をおこないます。法律で定められた上限以上の金利で借金をしていた場合、利息を払い過ぎていた可能性があるため、正しい金利で計算し直して正確な借金額を割り出すのです。払いすぎた利息があると、過払い金としてお金を取り戻す手続きをおこないます。
5.収支・家計全体の調査
個人再生では、3~5年にわたり減額された借金を返済しなければなりません。このため、継続的な返済能力があるかどうかの確認が必要であり、相談者様の収支や家計全体の状況調査がおこなわれます。
具体的には、給与明細書や源泉徴収票など、同居する家族も含めて収支がわかる書類を提出しなければなりません。
6.財産・資産の調査
個人再生では、手続き後の返済額が申し立て人の財産の総額を下回ることは禁じられています。借金を減額してもらうかわりに、現在所有する財産以上の支払いが求められるのです。
このため、収支や家計全体の調査とあわせ、財産・資産をどれくらい持っているかという調査もおこなわれます。
預金通帳のほか、不動産を所有していれば登記簿謄本、マイカーを所有していれば車検証など、財産・資産となる書類も必ず提出しなければなりません。
7.個人再生の手続の選択
個人再生には2種類の手続きがあるため、どちらを選ぶか決めなければなりません。借金や収支、財産などさまざまな状況を総合的に判断し、小規模個人再生か給与所得者等再生のどちらを選ぶか決めましょう。
8.個人再生の申立書の作成
小規模個人再生と給与所得者等再生のどちらで手続きを進めるか決めたら、個人再生の申立書を作成します。申立書のほか、財産目録や家計簿、債権者一覧表などの添付書類も必要です。
必要な書類をご準備いただいてから実際に裁判所に提出するまで、2週間~1カ月ほどお時間がかかります。
9.個人再生の申し立て
個人再生の申立書と添付書類が作成できたら、東京地方裁判所へ提出して申し立てをおこないます。
10.個人再生委員の選任
東京地方裁判所では、原則全案件で個人再生委員が選任されます。選任後、1週間以内に面談の実施が必要なので、個人再生委員と連絡をとったうえで日程を調整しましょう。
11.個人再生委員との打ち合わせ
個人再生委員との面談は、裁判所内や個人再生委員の事務所などでおこなわれます。申立書や添付書類の内容を確認されるほか、個人再生手続きに関する質問にも答えなければなりません。
12.履行可能性テスト(トレーニング期間)の開始
個人再生手続き後の返済能力を証明するために、東京地裁では6カ月間の履行可能性テストがおこなわれます。東京地方裁判所では、申し立てから1週間以内に最初の振り込み期日が設定されるケースが多いです。
個人再生委員と面談する前に振り込む場合もあるため、スケジュールにご注意ください。
13.個人再生手続開始決定
個人再生員から提出された手続き開始に関する意見書を参考に、裁判所は個人再生を認めるかどうかの審査をおこないます。問題がなければ、申し立てから4週間ほどで個人再生手続きが開始されます。
14.債権届出・債権調査
個人再生手続きが認められると、裁判所は債権者へ開始決定書や債権届出の通知を送付し、借金の正確な額を調査します。
15.債権認否一覧表・報告書の提出
債権者が債権届出書で借金の額を報告すると、申し立て人はその金額を認めるか否かを判断し、裁判所に書類を提出しなければなりません。同時に、申し立て人の経済状況が申し立て時と変わっていないかどうか、報告する書類も必要です。
16.異議の申述・評価申立て
一般的に、個人再生手続き後の借金額は申立書に記載した金額で確定しますが、債権者が金額の変更を届け出ることもあります。変更された金額に異議がある場合、定められた期間内に書面で異議申し立てをしなければなりません。
17.再生計画案の作成
個人再生手続き後の借金額が決まったら、残りの借金総額や返済方法など詳細を記載した再生計画案を作成します。東京地方裁判所の場合、再生計画案とあわせて返済計画表も提出しなければなりません。
期限内に提出できなければ、個人再生手続きは廃止されてしまいます。
18.再生計画案の決議等
裁判所は、提出された再生計画案について、債権者へ同意するかどうか確認します。小規模個人再生では書面決議、給与所得者等再生の場合は意見聴取がおこなわれるのが一般的です。
19.裁判所による再生計画認可・不認可の決定
債権者の意見などもふまえたうえで、裁判所は再生計画案を認めるか否かを決定します。不認可になった場合、ほかの債務整理を検討しなければなりません。
20.再生計画認可・不認可決定の確定
再生計画案の認可・不認可が決まってから約2週間後、決定の結果が政府発行の官報に掲載されます。結果が確定するのは、そこからさらに2週間後、つまり認可・不認可の決定が出てから約1カ月後です。
21.個人再生手続の終了・再生計画に基づく弁済の開始
再生計画認可・不認可が確定すると、個人再生手続きは終了です。その後は再生計画に基づき、減額された借金の返済を開始します。
22.再生計画の遂行
再生計画で定めた期間きちんと返済を続ければ、計画は遂行され借金完済となります。途中で返済が滞るようなことがあれば、再生計画が取り消され、残りの借金を一括請求される可能性もあるのでご注意ください。
大阪地方裁判所の場合の個人再生手続きの流れ
大阪地方裁判所で個人再生手続きをおこなう場合、基本的な流れは東京地方裁判所とほとんど同じですが、大きな違いが2点あります。1点目は、弁護士や司法書士に手続きを任せていれば、個人再生委員が選任されることがほとんどないという点です。
例外的に選任されるケースもありますが、一般的な借金であれば原則選任されません。個人再生委委員との面談がないため、手続きにかかる期間も東京地方裁判所と比べてかなり短縮化されます。個人再生委員に支払う報酬も不要なため、経済的な負担も軽いです。2点目は、積立トレーニングがないという点です。
大阪地方裁判所では、個人再生の申し立てをおこなってから実際に返済が開始するまで、口座を新たに開設して返済に必要な額以上のお金を毎月積み立てます。
順調に積み立てができているかどうか裁判所から審査されますが、6カ月という期間の縛りがないのでやはりスケジュールの短縮が期待できます。一般的には、申し立てから約2週間で個人再生手続きの開始決定がなされ、そこから約100日後に認可・不認可が決定するというスケジュールが多いです。
個人再生に必要な書類
個人再生を申し立てる場合、申立書や陳述書(申立書に記載されない内容を詳しく説明した書類)、財産目録などにさまざまな書類を添付しなければなりません。
具体的に必要な書類は以下の通りですが、すべてが必要というわけではなく、相談者様ごとに必要書類が異なります。
申立書の添付書類 |
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住民票の写し、債権者一覧表、清算価値チェックシート |
陳述書の添付書類 | |
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収入に関するもの | ・申立人の給与証明書(3ヶ月分) ・申立人の源泉徴収票(2年分) ・申立人の課税証明書(2年分) ・受給証明書 ・申立人の確定申告書(2年分) |
過去の職業・収入等に関するもの | ・以前の就業先での給与証明書 |
現在の住居の状況に関するもの | ・賃貸借契約書,住宅使用許可書 |
生活の状況に関するもの | ・同居人の給与証明書 ・同居人の源泉徴収票 |
債権者との訴訟等の状況に関するもの | ・支払督促正本 ・調停(和解)調書正本 ・判決正本 ・差押命令正本 ・仮差押命令正本 ・仮処分命令正本 |
財産目録の添付書類 | |
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預金・貯金に関するもの | ・通帳 ・残高証明書 |
貸付金に関するもの | ・契約書 |
退職金制度に関するもの | ・退職金見込額証明書 |
保険に関するもの | ・保険証券 ・解約返戻金に関する証明書 |
有価証券等に関するもの | ・証券のコピー ・証券の時価がわかる資料 |
自動車・二輪車に関するもの | ・車検証 ・登録事項証明書 ・車両の時価がわかる資料 |
不動産に関するもの | ・登記簿謄本(登記事項証明書) ・共担目録 ・固定資産評価額証明書 ・評価書 |
返済期間の延長が認められる場合
個人再生は、借金の金額によりますが原則5分の1に減額したうえで、原則3年かけて分割返済していく手続きです。ただし、特別な事情があれば3年から5年に返済期間の延長が認められる場合もあります。
たとえば、家族の医療費や子どもの養育費などの支出が増えたり、失業によって収入が減ったりしたケースです。このような場合は経済的な負担が増し、当初計画していた返済がむずかしくなることもあります。
そのままでは自己破産してしまうおそれもあるため、裁判所がやむを得ないと判断した場合に限り、返済期間の延長が認められるのです。再生計画がすでに開始され、返済をおこなっている途中であっても、返済期間の延長を申し出ることは可能です。
ただし、ギャンブルや買い物といった浪費により返済がむずかしくなった場合、基本的に期間の延長は認められないのでご注意ください。また、返済期間延長の対象となるのは、個人再生手続きにより減額された部分の借金のみです。
住宅ローンなど、もとから減額対象ではない借金については返済期間が延長されません。返済期間の延長を希望する場合は、個人再生を申し立てた裁判所に対し、新たに再生計画変更の申し立てをおこないます。
裁判所は債権者の意見を聞いたり申し立て人から事情を確認したりしたうえで、返済期間の延長を認めるか否か判断します。どれほど申し立て人が強く希望しても、裁判所が認めない限り返済期間の延長はできません。
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借金を5分の1にまで減額したうえで分割返済が可能になる個人再生は、返済で苦しむ方にとって希望ともいえる手続きです。しかし、裁判所に申し立てが必要なため手続きが複雑で、個人の力だけですべてをおこなうのはむずかしいこともあります。
このため、個人再生を検討される場合は、法律家に相談してアドバイスを受けたほうが安心です。ご自身だけで悩みを抱えこまず、まずは杉山事務所の無料相談をご利用ください。当事務所は、返済がむずかしいときに借金を減額する債務整理の専門家です。
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