保証債務(ほしょうさいむ)とは?
保証債務とは、保証人が負う債務のことを指します。主たる債務者が債務を履行できない場合に、保証人が代わりに弁済する義務を負うものです。
債権者は、主債務者が返済できなくなった場合に保証人に対して支払いを請求することができます。保証債務は主たる債務に付随する従属的な性質を持っています。
保証債務の基本概念
定義 | 保証人が主たる債務者の債務を保証するために負担する債務 |
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性質 | 主たる債務に従属する二次的な債務 |
法的根拠 | 民法第446条以下に規定されている |
保証債務は、主たる債務の存在を前提として成立します。保証人は債権者との間で保証契約を締結することで保証債務を負います。保証契約は原則として書面で行う必要があります。
保証債務の特徴
附従性 | 主たる債務の存在に依存し、主債務がなければ保証債務も存在しない |
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補充性 | 原則として主たる債務者が支払えない場合に初めて保証人に請求できる |
随伴性 | 主たる債務が移転すると、それに伴って保証債務も移転する |
最高額の定め | 個人が保証人となる場合、極度額(最高限度額)の定めが必要 |
保証債務の最も重要な特徴は附従性です。主たる債務が無効であれば保証債務も無効となり、主たる債務が減額されれば保証債務も同様に減額されます。また、2020年の民法改正により、個人が保証人となる場合には極度額の定めが必要となりました。
保証債務の種類
普通保証 | 主たる債務者に請求しても支払いがない場合に初めて保証人に請求できる形式 |
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連帯保証 | 主たる債務者への請求なしに直接保証人に請求できる形式で、最も一般的 |
根保証 | 一定の範囲内で継続的に発生する不特定の債務を保証する形式 |
日本で最も多く利用されているのは連帯保証です。連帯保証の場合、債権者は主債務者への請求や財産の差し押さえなしに、直接保証人に請求することができます。根保証は、取引先の売掛金の保証や賃貸借契約の保証人などでよく利用されています。
保証債務と債務整理の関係
主債務者の自己破産 | 主債務者が自己破産しても保証債務は消滅せず、保証人への請求が強まる |
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保証人の債務整理 | 保証債務も債務整理の対象となり、任意整理や自己破産などで解決できる |
求償権 | 保証人が弁済した場合、支払った金額を主債務者に請求できる権利 |
主債務者が自己破産した場合、債権者は保証人に対して全額の支払いを求めることが多くなります。保証人自身も返済が困難な場合は、保証債務を含めた債務整理を検討する必要があります。保証人が代わりに返済した場合は、主債務者に対して求償権を行使できますが、主債務者が破産している場合は実質的に回収が困難なことが多いです。
保証債務に関する注意点
責任の重大性 | 保証人は主債務者と同等かそれ以上の返済責任を負う可能性がある |
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経済的リスク | 主債務者の返済能力低下により予期せぬ高額な負担が生じる可能性 |
期間の考慮 | 長期の保証は将来の経済状況の変化によるリスクが高まる |
書面による契約 | 保証契約は原則として書面で行う必要があり、口頭での約束では無効 |
保証人になることは非常に大きなリスクを伴います。特に親族や友人の保証人になる際は、感情的な判断ではなく、将来にわたる経済的影響を十分に考慮する必要があります。安易に保証人になることで、自身の生活基盤が脅かされるケースも少なくありません。
保証人の権利
- 催告の抗弁権(まず主債務者に請求するよう求める権利)
- 検索の抗弁権(主債務者に財産があればそれから回収するよう求める権利)
- 分別の利益(複数の保証人がいる場合に負担部分のみの支払いを主張できる権利)
- 主たる債務者に対する求償権(代わりに支払った金額を請求できる権利)
- 免責請求権(事情変更がある場合に保証債務から免れることを求める権利)
普通保証人には催告の抗弁権と検索の抗弁権がありますが、連帯保証人にはこれらの権利がありません。そのため、連帯保証人は主債務者と同様の立場で支払い義務を負うことになります。保証人になる際は、どのような種類の保証人になるのかを確認することが重要です。
保証債務の消滅
主たる債務の消滅 | 主たる債務が弁済や免除などで消滅すると保証債務も自動的に消滅する |
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保証契約の解除 | 債権者の同意を得て保証契約を解除することで将来の保証債務から免れる |
時効 | 保証債務自体の消滅時効(原則として権利を行使できる時から10年) |
法定事由 | 債権者の保証人に対する義務違反や信義則違反などの法定事由による消滅 |
保証債務は主たる債務の消滅とともに消滅するのが原則です。また、債権者と合意のうえで保証契約を解除することも可能ですが、債権者の同意がない限り一方的に解除することはできません。将来発生する債務の保証(根保証)の場合は、一定の予告期間を設けて解約することができる場合もあります。
よくある質問
連帯保証人の場合、債権者は主債務者に請求することなく、直接保証人に請求することができます。
これは普通保証人が持つ「催告の抗弁権」や「検索の抗弁権」が連帯保証人には認められていないためです。
連帯保証人は主債務者と同等の立場で債務を負担するため、主債務者に先に請求してもらうよう主張することはできません。このリスクを理解した上で連帯保証人になるかどうかを検討することが重要です。
保証人が債務を支払った場合、主債務者に対して求償権を行使することができます。
求償権とは、保証人が債権者に支払った金額に加え、その利息や必要費用、損害金なども請求できる権利です。
ただし、主債務者に資力がない場合は実質的な回収が難しくなることが多いです。また、求償権の行使には時効があるため、支払い後は速やかに主債務者への請求手続きを検討することをおすすめします。
主債務者が自己破産しても、保証債務は消滅しません。
むしろ、主債務者が免責許可決定を受けた場合、債権者は保証人に対して集中的に請求するようになります。
このような場合、保証人自身も返済が困難であれば、任意整理、個人再生、自己破産などの債務整理を検討する必要があります。早めに法律の専門家に相談し、適切な対応を取ることが重要です。
まとめ
保証債務は、他人の債務を保証するという重大な責任を伴う法的義務です。主たる債務者が返済できなくなった場合、保証人が代わりに支払う義務を負います。
保証債務には附従性、補充性、随伴性といった特徴があり、普通保証、連帯保証、根保証などの種類があります。特に連帯保証の場合、債権者は主債務者への請求なしに直接保証人に請求することができるため、責任は重大です。
主債務者が債務整理をした場合でも保証債務は消滅せず、むしろ保証人への請求が強まることが一般的です。保証人自身も返済が困難な場合は、保証債務を含めた債務整理を検討する必要があります。
保証人になる前には、その責任の重さとリスクを十分に理解し、慎重に判断することが重要です。保証債務に関する問題や債務整理に伴う保証債務の取り扱いでお悩みの方は、杉山事務所の無料相談をお気軽にご利用ください。
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