債権(さいけん)とは?
債権とは、ある人(債権者)が特定の相手方(債務者)に対して一定の行為(給付)をするように請求できる権利です。債務整理においては、貸金業者やクレジット会社などが持つ借金の返済を求める権利が債権にあたります。
債権の基本概念
債権は、債権者と債務者という二者間の法律関係を表します。例えば、お金を貸した人は返してもらう権利(債権)を持ち、借りた人はそれを返す義務(債務)を負います。
定義 | 特定の相手方に一定の行為を請求できる権利 |
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構成要素 |
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法的根拠 | 民法第399条(債権の意義) |
債権の基本的な構成要素には、権利を持つ債権者、義務を負う債務者、そして請求の対象となる給付の三つがあります。債務整理の場面では、貸金業者やクレジット会社が債権者となり、借入れをした個人が債務者となることが一般的です。
債権の主な種類
債権にはさまざまな種類があり、債務整理においては特に金銭債権が重要です。金銭債権は借入金や未払いの料金など、お金の支払いを求める権利を指します。
金銭債権 | 金銭の支払いを求める権利(例:借入金、クレジットカード利用代金) |
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物権的請求権 | 物の引き渡しを求める権利(例:リース契約の物品返還請求権) |
作為債権 | 特定の行為を求める権利(例:契約で定められたサービス提供の請求権) |
不作為債権 | 特定の行為をしないことを求める権利(例:秘密保持義務の履行請求権) |
債務整理の対象となるのは主に金銭債権です。消費者金融からの借入金、クレジットカードの利用代金、住宅ローンなどがこれにあたります。債務整理を行う際は、これらの金銭債権の整理方法を検討することになります。
債権の発生原因
債権は様々な原因によって発生します。債務整理で扱う債権の多くは契約から発生したものですが、その他にも発生原因があります。
契約 | 当事者間の合意により発生(例:金銭消費貸借契約、クレジット契約) |
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事務管理 | 他人の事務を管理したことによる費用償還請求権 |
不当利得 | 法律上の原因なく利益を得た場合の返還請求権(例:誤って多く支払われた金額の返還請求) |
不法行為 | 他人に損害を与えた場合の損害賠償請求権(例:交通事故の損害賠償) |
債務整理では主に契約に基づく債権が扱われます。金銭消費貸借契約やクレジット契約などから生じる債権が対象となることがほとんどです。しかし、損害賠償請求権のような不法行為に基づく債権も債務整理の対象となることがあります。
債権の特徴
債権には他の権利と区別される特徴がいくつかあります。これらの特徴を理解することで、債権関係における自分の立場や権利・義務をより明確に把握することができます。
相対性 | 特定の債務者に対してのみ行使可能(対世的効力を持つ物権とは異なる) |
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請求力 | 債務者に履行を求める力(訴訟によって強制執行も可能) |
給付の内容 | 金銭の支払い、物の引渡し、サービスの提供など多様な内容がある |
時効 | 一定期間の経過により消滅する(一般的な金銭債権は5年または10年) |
債権の「相対性」は債務整理において重要な特徴です。債権者は特定の債務者に対してのみ請求できるため、債務整理では債務者本人の債務のみが対象となります。また、時効の特徴も重要で、時効が完成した債権については返済義務がなくなる可能性があります。
債権の行使方法
債権者が債権を実現する方法にはいくつかの手段があります。債務整理においては、債権者がこれらの手段をどのように用いるかを理解しておくことが重要です。
任意履行の請求 | 債務者に対して直接履行を求める(督促状の送付、電話による催促など) |
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強制執行 | 裁判所を通じて強制的に実現を図る(債務名義を取得して財産の差押えなど) |
相殺 | 反対債権がある場合に相殺する(預金と借入金の相殺など) |
債権譲渡 | 第三者に債権を譲渡する(債権回収会社への譲渡など) |
債務整理の進行中に債権者が強制執行を行おうとする場合があります。しかし、債務整理手続きを開始すると、手続きの種類によっては債権者の権利行使が制限されます。例えば自己破産の申立てを行うと、裁判所による保全処分により強制執行が停止することがあります。
債務整理における債権の位置づけ
債務整理においては、債権の取扱いが手続きの中心となります。債務整理の種類によって債権がどのように扱われるかが異なるため、それぞれの特徴を理解しておくことが重要です。
債権の確定 | 債務整理開始時点での債権額の確定(残高証明書などによる) |
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債権の変更 | 任意整理や個人再生における返済条件の変更(利息カットや長期分割払いなど) |
債権の放棄 | 自己破産における債権の一部または全部の放棄(免責決定による債務免除) |
債権の優先順位 | 担保権の有無などによる弁済の優先順位の決定(住宅ローンは住宅に担保権が設定されている) |
任意整理では利息のカットや分割払いなどの条件変更を行います。個人再生では債権額の大幅な減額が可能です。自己破産では原則としてすべての債権が免責の対象となり、返済義務がなくなります。ただし、税金や養育費などは免責されない債権もあります。
債権に関する注意点
債権に関連して注意すべき点がいくつかあります。債務整理を検討する際は、これらの点についても理解しておくことで、より適切な対応が可能となります。
時効管理 | 債権の消滅時効に注意が必要(時効の完成により債権が消滅する可能性) |
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証拠の保管 | 債権の存在を証明する書類の適切な保管(契約書、取引履歴、返済記録など) |
債権の優先順位 | 担保権の設定などにより優先順位が変わる可能性(担保付債権は一般債権より優先される) |
債権譲渡の影響 | 債権が譲渡された場合の対応(新しい債権者への支払いが必要) |
債務整理を検討する際は、特に時効の管理が重要です。消費者金融などからの借入金は、最終返済日から5年または10年で時効となる可能性があります。時効が完成している債権については、債務整理の対象から外すことも選択肢となります。
よくある質問
一般的な金銭債権の消滅時効期間は、債権者が権利を行使できることを知った時から5年間、または権利を行使できる時から10年間です。
貸金業者からの借入金の場合、最終返済日または最終取引日から計算されることが一般的です。
ただし、2020年4月に民法が改正され、それ以前は商事債権が5年、一般債権が10年となっていたため、いつの債権かによって適用される時効期間が異なることがあります。
債権者からの連絡が途絶えた場合でも、債権自体は消滅していないことがほとんどです。
突然連絡が来なくなった理由としては、債権譲渡が行われた可能性や、一時的に回収を諦めている可能性などが考えられます。
時効の管理のためにも、最終返済日や最終取引日を記録しておくことをおすすめします。また、返済能力がある場合は、債権者に連絡して返済方法を確認することも大切です。
債権譲渡の通知を受けた場合は、新しい債権者(譲受人)に対して支払いを行う必要があります。
通知後に以前の債権者(譲渡人)に支払いを行っても、債務の弁済としては認められない可能性があります。
譲渡通知を受け取ったら、新しい債権者の正確な情報(名称、住所、連絡先、支払方法など)を確認し、記録しておきましょう。また、債権譲渡に関する疑問がある場合は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
債務整理の種類によって債権の扱いが異なります。自己破産では免責許可決定を受けると、原則としてほとんどの債権が免除されます。
しかし、税金や国民健康保険料などの公租公課、養育費、故意の不法行為に基づく損害賠償債権などは、自己破産でも免責されないものがあります。
また、任意整理や個人再生では債権は減額されるものの、全額免除ではなく一部返済が必要です。どの債務整理方法が適しているかは、個々の状況によって異なりますので、専門家に相談することをおすすめします。
まとめ
債権とは、ある人(債権者)が特定の相手方(債務者)に対して一定の行為をするように請求できる権利です。債務整理においては主に金銭債権が対象となります。
債権は契約などから発生し、相対性や請求力、時効による消滅などの特徴を持ちます。債権者は任意履行の請求や強制執行などの方法で債権を実現しようとします。
債務整理の種類によって債権の扱いは異なり、任意整理では条件変更、個人再生では減額、自己破産では免責による消滅という形で処理されます。また、債権の時効管理や証拠書類の保管なども重要です。
債務問題でお悩みの方は、債権について正しく理解した上で、適切な債務整理方法を選択することが大切です。専門的な判断が必要な場合は、杉山事務所の無料相談をお気軽にご利用ください。経験豊富な司法書士が、ご相談者様の状況に合わせた最適な解決策をご提案いたします。
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