債権譲渡(さいけんじょうと)とは?

債権譲渡とは、債権者が自身の持つ債権を第三者に譲渡することです。

債権回収の効率化や資金調達などを目的として行われます。債務者にとっては支払先が変更になりますが、債務の基本的な条件は変わりません。

債権譲渡の基本概念

債権譲渡は、債権者が持つ債権を第三者に移転する法律行為です。譲渡する側を「譲渡人」、譲り受ける側を「譲受人」と呼びます。

譲渡人 元の債権者で、債権を譲渡する側の当事者です
譲受人 新しい債権者となる、債権を譲り受ける側の当事者です
債務者 債務を負っている人で、支払先が変更になります

債権譲渡は民法上の制度であり、原則として債権者は自由に債権を譲渡することができます。ただし、特約によって譲渡が禁止されている場合もあります。

債権譲渡の手続きと効力発生

債権譲渡の手続き

譲渡契約の締結 譲渡人と譲受人の間で債権譲渡契約を結びます
債務者への通知 債権譲渡の事実を債務者に通知します
債務者の承諾 通知の代わりに債務者の承諾を得る方法もあります

譲渡契約は譲渡人と譲受人の合意のみで成立しますが、債務者や第三者に対する効力を生じさせるには、通知や承諾などの追加手続きが必要です。

債権譲渡の効力発生時期

当事者間の効力 譲渡人と譲受人の間では、契約締結時点で効力が発生します
債務者に対する効力 債務者への通知または債務者の承諾があった時点で効力が発生します
第三者に対する効力 確定日付のある証書による通知または承諾があった時点で効力が発生します

第三者に対する効力については、確定日付のある通知や承諾が必要とされています。これは、債権の二重譲渡などのトラブルを防ぐためです。

債権譲渡の目的と種類

債権譲渡の主な目的

  • 債権回収の効率化(債権回収業者への委託など)
  • 資金調達(債権の流動化、売掛債権の早期現金化)
  • 事業再編や事業譲渡の一環として
  • 不良債権の処理(貸倒れリスクの移転)

特に金融機関や企業間取引では、資金調達や債権管理の効率化のために債権譲渡が活用されています。個人向け貸付債権についても、債権回収会社への譲渡が一般的に行われています。

債権譲渡の種類

譲渡禁止特約なしの債権 債権者の自由意思で譲渡可能な債権です
譲渡禁止特約付きの債権 債務者の承諾がない限り譲渡できない債権です
将来債権の譲渡 まだ発生していない将来の債権を先に譲渡することです

譲渡禁止特約があっても、善意の第三者に対しては特約の効力が制限される場合があります。また、将来債権の譲渡は資金調達の手段として活用されています。

債務者の立場と注意点

債務者の立場

支払先の変更 債権譲渡後は新しい債権者(譲受人)に支払う必要があります
抗弁権の維持 元の債権者に対して主張できた抗弁は、新債権者に対しても主張できます
相殺の可能性 一定の条件下で、債権譲渡後も相殺権を行使できる場合があります

債権譲渡があっても、債務者の立場は基本的に不利になることはありません。元の債権者に対して主張できた事由は、原則として新債権者に対しても主張できます。

債権譲渡に関する注意点

  • 債権譲渡通知を受け取ったら、その真正性を確認しましょう
  • 支払先や支払方法の変更には慎重に対応しましょう
  • 個人情報の取り扱いについて確認しましょう
  • 不審な点がある場合は、専門家に相談しましょう
  • 債権譲渡が繰り返される可能性もあるので注意が必要です

特に貸金業者から債権回収会社への譲渡では、支払方法や連絡先が変更になることが多いため、通知内容をよく確認することが重要です。また、不審な通知には注意が必要です。

債務整理における債権譲渡

債務整理を検討している場合、債権譲渡の有無は重要な確認事項です。債権譲渡されていると、交渉相手や手続きに影響があります。

任意整理
  • 現在の債権者(譲受人)と交渉する必要があります
  • 譲渡前の取引履歴なども確認が必要です
  • 債権譲渡後に利息や遅延損害金の計算方法が変わっている可能性があります
個人再生
  • 譲渡された債権も再生計画に含める必要があります
  • 現在の債権者を正確に把握することが重要です
  • 債権届出時に債権譲渡の事実が明らかになります
自己破産
  • 譲渡された債権も破産手続きの対象となります
  • 債権者一覧に現在の債権者を記載します
  • 債権譲渡の履歴は、債権調査の過程で確認されます

債務整理を検討する際は、債権譲渡の有無にかかわらず、専門家に相談することをおすすめします。特に複数回の債権譲渡がある場合は、正確な債権者情報の把握が難しいことがあります。

よくある質問

原則として、適正な債権譲渡通知を受け取った場合は、新しい債権者(譲受人)に支払う必要があります。新債権者への支払いが債務の弁済として有効になります。

ただし、通知の真正性には十分注意してください。不審な点がある場合は、元の債権者に確認するか、法律の専門家に相談することをおすすめします。

なお、通知を受ける前に元の債権者に支払った場合は、その支払いは有効とされます。

債権譲渡が行われても、債務の基本的な条件(元本、金利、返済期間など)は変更されません。債権譲渡は債権者が変わるだけで、債務の内容自体は変わりません。

ただし、実務上は支払方法(振込先口座など)が変更されることが一般的です。また、新債権者から和解案などが提示される場合もあります。

不明な点があれば、新債権者に確認するか、専門家に相談することをおすすめします。

債権が譲渡されていても、過払い金請求は可能です。ただし、請求先については状況によって異なります。

一般的には、過払い金が発生した当時の債権者(譲渡人)に対して請求することになりますが、譲渡契約の内容によっては新債権者(譲受人)に請求する場合もあります。

過払い金請求を検討している場合は、取引履歴や債権譲渡の内容を確認するために、専門家に相談することをおすすめします。

債権回収会社など新債権者からの督促が厳しくなったと感じる場合でも、違法な取立てはできません。貸金業法や債権管理回収業法で、取立て行為は厳しく規制されています。

深夜の電話、職場への連絡、威圧的な言動などは違法な取立てに該当する可能性があります。そのような行為があれば記録に残し、必要に応じて監督官庁に相談しましょう。

また、返済が困難な場合は債務整理も選択肢の一つです。杉山事務所にご相談いただければ、適切な対応方法をアドバイスいたします。

まとめ

債権譲渡とは、債権者が自身の持つ債権を第三者に譲渡する法律行為です。債権回収の効率化や資金調達などを目的として行われるもので、特に金融機関や債権回収会社との間で頻繁に行われています。

債務者にとっては支払先が変更になりますが、債務の基本的な条件は原則として変わりません。また、元の債権者に対して主張できた抗弁事由は、新債権者に対しても主張できるのが原則です。

債権譲渡の通知を受け取った場合は、その真正性を確認し、指示された新しい支払方法に従うことが重要です。不審な点がある場合や、返済に困難を抱えている場合は、専門家への相談をおすすめします。

債務整理を検討している場合は、現在の債権者を正確に把握することが大切です。債権譲渡の有無にかかわらず、適切な債務整理手続きを進めることができます。債権譲渡に関連して不安や疑問がある場合は、杉山事務所の無料相談をお気軽にご利用ください。

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