引き直し計算(ひきなおしけいさん)とは?
引き直し計算とは、貸金業者との過去の全取引について、利息制限法に基づいた適正な金利で再計算を行うことを指します。
この計算により、実際に支払うべき金額と既に支払った金額の差額を明らかにし、債務の減額や過払い金の発生を確認する重要な手続きです。
引き直し計算の基本概念
定義 |
過去の取引を利息制限法の上限金利で再計算すること |
目的 |
適正な債務額の算出と過払金の確認 |
法的根拠 |
利息制限法、貸金業法 |
引き直し計算の方法
引き直し計算は、一連計算と分断計算の二つの方法があります。
一連計算 |
- 定義:複数の契約を一つの連続した取引とみなして計算する方法
- 特徴:取引全体を通して元本と利息を再計算
- メリット:過払い金が発生しやすく、債務者に有利になる傾向がある
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分断計算 |
- 定義:各契約を独立した取引として個別に計算する方法
- 特徴:契約ごとに元本と利息を再計算
- 特徴:債権者に有利になる傾向がある
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一連計算と分断計算の比較
取引の捉え方 |
- 一連計算:全取引を一つの流れとして捉える
- 分断計算:各契約を独立したものとして扱う
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過払い金の発生 |
- 一連計算:過払い金が発生しやすい
- 分断計算:過払い金が相殺されやすく、発生しにくい
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適用される場面 |
- 一連計算:同一債権者との継続的な取引
- 分断計算:異なる債権者との取引や、明確に分離された契約
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裁判所の判断 |
近年の傾向として、一連計算を認める判例が増加している |
一連計算と分断計算の選択
取引履歴の確認 |
継続的な取引か、独立した契約かを確認 |
債権者との関係 |
同一債権者との長期的な取引関係の有無 |
契約の独立性 |
各契約が明確に分離されているかどうか |
法的助言の重要性 |
専門家に相談し、適切な計算方法を選択 |
引き直し計算の主な手順
1.取引履歴の取得 |
貸金業者に取引履歴の開示を請求 |
2.金利の適用 |
利息制限法の上限金利(15~20%)を適用 |
3.再計算 |
元本および利息を再計算 |
4.差額の確認 |
実際の支払額と再計算額の差額を算出 |
引き直し計算の効果
債務額の減額 |
過払いがない場合でも、債務残高が減少する可能性 |
過払い金の発見 |
払いすぎていた金額(過払金)が判明する場合がある |
返還請求の根拠 |
過払い金が発生している場合、返還請求の根拠となる |
引き直し計算が必要となる背景
グレーゾーン金利 |
過去の高金利での貸付 |
みなし弁済規定 |
旧貸金業法下での法定金利を超える利息の容認 |
最高裁判決 |
みなし弁済の要件の厳格化 |
引き直し計算の対象となる取引
- 消費者金融からの借入
- クレジットカードのキャッシング
- 銀行カードローン(一部)
- 事業者向け貸付(個人事業主の場合)
引き直し計算の注意点
時効の問題 |
過払い金請求には消滅時効がある |
取引履歴の入手 |
古い取引履歴の入手が困難な場合がある |
複雑な計算 |
専門知識が必要な複雑な計算となる場合がある |
貸金業者の対応 |
貸金業者によって対応が異なる場合がある |
債務整理における引き直し計算について
任意整理 |
債務額の正確な把握と過払金の確認に利用 |
個人再生 |
適正な債務額の算定に活用 |
自己破産 |
債務総額の確定と過払金の有無の確認に使用 |
引き直し計算の活用方法
債務の正確な把握 |
現在の正確な債務額を知ることができる |
過払い金請求 |
過払い金が発見された場合、返還請求が可能 |
交渉材料 |
債権者との交渉において有利な材料となる |
経済的再生 |
債務の減額や過払金の回収により、経済的再生の機会を得る |
引き直し計算の実施や、過払い金請求についてお悩みの方は、杉山事務所にお気軽にご相談ください。
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