異時廃止(いじはいし)とは?

異時廃止とは、破産手続が開始された後、その途中で破産者に高価な財産がなく、債権者への配当の見込みがないことが判明した場合に、配当に至らずに破産手続を終了させることを指します。

これは破産廃止の一種であり、自己破産の手続きにおいて重要な概念です。破産法第216条に基づいた手続きで、無駄な破産手続きの継続を避けるために行われます。

異時廃止の基本概念

定義 破産手続開始後に配当の見込みがないことが判明し、手続を途中で終了させること
目的 無益な破産手続の継続を避け、司法資源の効率的な活用を図ること
法的根拠 破産法第216条に基づく法的手続き

異時廃止は、破産手続きを無駄に長引かせないための制度です。配当の見込みがないと判断された場合に適用され、裁判所の決定により手続きが終了します。

異時廃止の条件

破産財団の不足 破産者の財産が破産手続の費用を十分に賄えない状態であること
配当の見込みなし 債権者への配当が見込めないと判断されること
破産手続開始後の判明 これらの事実が破産手続開始後に明らかになること

異時廃止が適用されるためには、破産手続開始後に破産財団の状況を調査した結果、債権者への配当が見込めないことが判明する必要があります。

単に資産が少ないだけでなく、債権者への配当が見込めないと破産管財人が判断した場合に、異時廃止の申立てが行われます。

異時廃止の手続きの流れ

  1. 破産管財人による財産状況の調査
  2. 債権者集会の開催と意見聴取
  3. 破産管財人から裁判所への異時廃止の申立て
  4. 裁判所による異時廃止の決定
  5. 破産手続の終了

異時廃止の手続きは、破産管財人による財産調査から始まります。十分な財産がないと判断された場合、債権者集会で意見を聴取した後、裁判所に申立てを行います。

裁判所が異時廃止を決定すると、破産手続きは終了し、破産管財人の任務も終わります。この流れは通常数か月から半年程度かかることが一般的です。

異時廃止と同時廃止の違い

異時廃止 破産手続開始後に財産調査を行った結果、配当の見込みがないと判明し手続を終了する
同時廃止 破産手続開始の申立て時点で財産不足が明らかであり、開始決定と同時に手続を終了する

異時廃止と同時廃止の最大の違いは、破産手続きの経過時間です。同時廃止は破産開始決定と同時に手続きが終わりますが、異時廃止は一定期間の調査後に行われます。

同時廃止の場合は破産管財人が選任されないのに対し、異時廃止では破産管財人が選任され、財産調査が行われる点も大きな違いです。

異時廃止の効果

破産手続の終了 異時廃止決定により破産手続が終結する
管財人の任務終了 破産管財人の職務が終了し、財産管理の権限が破産者に戻る
権利制限の解除 破産者に課せられていた各種権利制限が解除される

異時廃止が決定されると、破産手続きは終了し、破産者の財産に対する管理処分権は破産者に戻ります。また、破産者に課せられていた旅行や居住地の制限なども解除されます。

ただし、免責許可決定を得るまでは債務自体は残ったままであることに注意が必要です。

債権者への影響

配当なし 異時廃止の性質上、債権者への配当は行われない
債権の存続 債権自体は法的には消滅せず、引き続き存在する
回収の困難 実質的には債権回収が困難となる

異時廃止は債権者にとって配当が得られないことを意味します。債権自体は法的には存続しますが、破産者の財産状況を考えると実質的な回収は困難です。

債権者は破産者が免責許可決定を受けるまでは理論上は債権回収が可能ですが、実務上はほとんど期待できません。

破産者のその後

免責手続 異時廃止後、別途免責許可の申立てが必要
債務の存続 免責が認められるまでは債務は法的に存続する
経済活動の再開 権利制限が解除され、新たな経済活動の再開が可能になる

異時廃止後、破産者は別途免責許可の申立てを行う必要があります。免責が認められれば、債務は法的に消滅し、経済的な再スタートが可能になります。

免責手続きは異時廃止とは別の手続きですので、必ず申立てを行わないと債務が残ったままになってしまいます。

異時廃止の注意点

免責との区別 異時廃止だけでは債務は免除されない
債権者の意見 債権者集会での意見が異時廃止の判断に影響する場合がある
財産発見時の対応 手続終了後に新たな財産が発見された場合は再開の可能性がある

異時廃止は破産手続きを終了させるだけで、債務を免除するものではありません。債務免除を受けるためには別途免責手続きが必要です。

また、手続き終了後に新たな財産が発見された場合、債権者からの申立てにより破産手続きが再開される可能性があることにも注意が必要です。

債務整理における異時廃止の位置づけ

自己破産の一形態 自己破産手続の結果として現れる手続きの一つ
他の債務整理との比較 任意整理や個人再生とは異なる特徴を持つ
再度の破産申立 原則として再度の申立ては可能だが、一定の制限期間がある

債務整理の方法には任意整理、個人再生、自己破産などがありますが、異時廃止は自己破産の手続き過程で生じる結果の一つです。

債務者の状況によって最適な債務整理方法は異なりますので、専門家に相談して自分に合った方法を選ぶことが大切です。

よくある質問

異時廃止になっただけでは、借金は自動的に帳消しになりません。異時廃止はあくまで破産手続きを終了させる決定であり、債務免除とは別の手続きです。

借金を法的に免除してもらうためには、異時廃止後に別途「免責許可」の申立てを行い、裁判所から免責許可決定を受ける必要があります。この免責が認められて初めて、法的に債務が消滅します。

異時廃止後に新たな価値のある財産が発見された場合、債権者は破産手続きの再開を裁判所に申し立てることができます。

ただし、再開されるかどうかは、発見された財産の価値と破産手続きにかかる費用との比較など、様々な要因を考慮して裁判所が判断します。

なお、免責許可決定を既に受けている場合は、原則として債権者はその後発見された財産に対して権利を主張できなくなります。

自己破産手続きにおいては、同時廃止の方が一般的です。統計的にも自己破産全体の約8割が同時廃止と言われています。

これは申立て時点で多くの破産者が既に財産をほとんど持っておらず、配当の見込みがないことが明らかであるためです。

異時廃止は、申立て時には財産があると判断されたものの、手続きを進める中で配当の見込みがないことが判明したケースで適用されるため、相対的に少なくなっています。

異時廃止の場合の破産手続きの期間は、一般的に3ヶ月から6ヶ月程度かかることが多いです。

これは破産管財人が選任され、財産調査を行い、債権者集会を開催するといった一連の手続きが必要なためです。

ただし、ケースによっては財産状況が複雑な場合などに、さらに時間がかかることもあります。

まとめ

異時廃止とは、破産手続開始後に破産者の財産が少なく債権者への配当が見込めないことが判明した場合に、手続きを終了させる制度です。破産法第216条に基づく手続きで、無駄な破産手続きの継続を避けるために行われます。

異時廃止が決定されると破産手続きは終了しますが、債務自体は免除されません。債務を法的に消滅させるためには、別途免責許可の申立てを行い、裁判所から免責許可決定を受ける必要があります。

同時廃止との違いは、破産手続き開始後に財産調査を行った結果として手続きが終了することです。同時廃止が自己破産全体の約8割を占める中、異時廃止は比較的少数派となっています。

異時廃止後は、破産者の権利制限が解除され、経済活動の再開が可能になります。ただし、免責を得るまでは債務は法的に存続しているため、別途免責手続きを行うことが重要です。

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