時効の中断(じこうのちゅうだん)とは?

時効の中断とは、進行中の時効期間が一度リセットされ、最初からやり直しになることを指します。

債務整理では、債権者債権の消滅を防ぐために行う重要な法的手続きの一つです。債権者は時効の完成を避けるためにさまざまな中断事由を利用します。

時効の中断の基本概念

定義 進行中の時効期間が中断され、その時点から新たに最初から時効期間が進行を始めること
効果 それまで進行していた時効期間が無効となり、中断事由が終了した時点から新たな時効期間が開始する
目的 債権者が債権の消滅を防ぎ、正当な債権を保全すること

時効の中断は債権者にとって重要な権利保全手段です。時効が完成してしまうと債権者は権利を行使できなくなるため、債権者は定期的に時効を中断する行為を行います。

主な時効中断事由

裁判上の請求 訴訟の提起、支払督促の申立て、調停の申立てなど
差押え 債務者の財産に対する強制執行や債権の取立てなどの法的措置
仮差押え仮処分 本請求前に債権を保全するための暫定的な法的措置
債務の承認 債務者が債務の存在を認める行為(一部弁済、返済計画の提出など)

これらの中断事由は債権者が積極的に行うものと、債務者の行為によって生じるものがあります。特に債務の承認は、債務者自身の行為によって時効が中断するため注意が必要です。

時効中断の効果

時効期間のリセット 中断事由が発生した時点で、それまでの時効期間がリセットされ、最初からやり直しになる
新たな時効期間 中断事由の終了時から、元の時効期間と同じ長さの新たな時効期間が開始する
判決後の時効期間 裁判で請求が認められ判決が確定した場合、新たに10年の時効期間が設定される

時効の中断により、債権者は債権回収の機会を延長することができます。特に判決が確定すると時効期間が10年に延長されるため、債権者にとって有利になります。

裁判上の請求による中断の特徴

  • 訴えの提起や支払督促の申立てにより、その時点で時効の中断効果が発生する
  • 訴えの取下げ、却下、請求棄却となった場合は、中断の効力は生じない
  • 判決が確定した場合、その債権の時効期間は新たに10年となる
  • 消費者金融や貸金業者の貸金債権も、判決確定後は5年ではなく10年の時効期間となる

裁判上の請求は債権者がよく利用する時効中断の手段です。訴訟を提起されると、債務者は応訴の負担を強いられるとともに、判決確定後は時効期間が延長されるというデメリットがあります。

債務の承認による中断の注意点

明確な意思表示 債務の存在を認める明確な行為や意思表示が承認として認められる
一部弁済 わずかな金額であっても債務の一部を支払うことで債務承認となり時効が中断する
返済計画の提出 返済計画書の作成・提出は債務の承認にあたり、時効が中断する
時効完成後の承認 時効完成後の承認は「時効の利益の放棄」と解釈され、新たな債務負担の意思表示となる可能性がある

債務の承認は債務者自身の行為によって発生する時効中断事由です。時効が完成しそうな債権について債権者から連絡があった場合は、安易に債務を認める発言や行動をすることで時効の利益を失う可能性があるため注意が必要です。

債務整理における時効の中断

任意整理 交渉中に債務の承認や分割返済契約を結ぶことで時効が中断する可能性がある
自己破産 破産手続開始決定により時効の進行が停止し、免責決定により債務が消滅する
個人再生 再生手続開始決定により時効の進行が停止し、再生計画認可により時効期間がリセットされる
過払い金請求 債権者による時効の中断行為に注意し、時効期間内に請求することが重要

債務整理を検討する際は、各債務の時効状況も考慮することが大切です。特に任意整理の場合は、交渉の過程で時効が中断する可能性があるため、事前に専門家に相談することをおすすめします。

時効の中断に関する注意点

債権者の行動 債権者は時効完成を防ぐため、定期的に督促状の送付や法的措置などの中断行為を行う可能性が高い
中断の証拠 中断事由の存在を証明するための証拠(訴状の写し、支払督促の写しなど)の保管が重要
複数債権の扱い 複数の債権がある場合、一部の債権に対する中断行為が他の債権の時効に影響しない場合がある
法改正の影響 民法改正により時効の中断に関する規定が変更される可能性があるため、最新の法律情報を確認する

時効の中断に関しては、債権者と債務者の利害が対立する部分です。債務者としては時効の状況を正確に把握し、適切な対応をとることが重要になります。

よくある質問

はい、債務の一部返済は「債務の承認」に該当するため、時効は中断されます。たとえ少額であっても、債務の支払いを行うことで債務の存在を認めたことになります。

その時点で時効期間は最初からやり直しになるため、時効が完成間近の債務については一部返済を行う前に検討が必要です。

このような場合は、法律の専門家に相談することをおすすめします。

訴訟が提起されると、その時点で時効は中断されます。訴状が裁判所に提出された時点で中断効果が発生します。

さらに、判決が確定した場合は、債権の時効期間は新たに10年となります。ただし、訴えが取り下げられたり、却下・棄却されたりした場合は時効中断の効力は生じません。

また、支払督促の申立てがあった場合も同様に時効は中断されますが、異議申立てにより督促が効力を失った場合は中断効果も失われます。

債務整理を検討中の場合、債権者との交渉の過程で安易に債務を承認しないよう注意が必要です。返済計画の提出や債務承認書の作成は時効の中断事由となります。

任意整理の場合は交渉中であっても時効は進行しますが、個人再生や自己破産の場合は手続開始により時効の進行が停止します。

債務整理を検討される場合は、各債務の時効状況も考慮して、杉山事務所などの専門家に相談することをおすすめします。

時効の中断は、それまでの時効期間がリセットされ、中断事由が終了した時点から新たに時効期間が開始します。一方、時効の停止は時効の進行が一時的に止まるだけで、停止事由が解消すると残りの期間から時効が再開します。

例えば、天災などにより権利行使ができない場合は時効が停止し、その障害が消滅してから一定期間は時効が完成しません。

債務整理では、主に時効の中断が問題となることが多いです。

まとめ

時効の中断は、進行中の時効期間をリセットして新たに時効期間をスタートさせる法的効果です。債権者は債権の消滅を防ぐために、裁判上の請求や差押え、仮差押えなどの法的手段を用いて時効を中断させることがあります。

また、債務者が債務の一部を支払ったり、返済計画を提出したりするなどの「債務の承認」行為によっても時効は中断します。特に時効が完成間近の債務については、安易な債務承認により時効の利益を失う可能性があるため注意が必要です。

債務整理を検討する際は、各債務の時効状況を確認し、任意整理の交渉過程で時効が中断しないよう配慮することが重要です。自己破産や個人再生では手続開始により時効の進行が停止するという特徴があります。

時効の中断に関するお悩みや、債権者からの請求への対応についてわからないことがある場合は、杉山事務所の無料相談をお気軽にご利用ください。個々の状況に応じて、時効の状況や最適な債務整理の方法についてアドバイスいたします。

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