給与の差押え(きゅうよのさしおさえ)とは?

給与の差押えとは、債権者債務名義(判決など)を取得した上で裁判所に強制執行を申し立て、債務者の給与の一部を強制的に回収する法的手続きです。

返済が滞ると債権者が最終的に取る手段として、給与の差押えは債務整理の現場でよく見られる重要な問題となっています。

差押えが行われると、債務者の収入が減少するだけでなく、勤務先に債務問題が知られるなど、様々な影響が生じます。

給与差押えの基本的な仕組み

給与差押えは、法的に債務の取立てを強制する手段であり、民事執行法に基づいて行われます。

債権者が裁判所から債務名義を取得した後、債務者の勤務先を第三債務者として差押命令を申し立てることで、給与から一定額を回収します。

定義 債務者の給与債権を強制的に差し押さえて債権回収を図る法的手続き
目的 裁判所の命令により、債務者の給与から直接債権を回収すること
根拠法 民事執行法第152条〜第167条(債権執行)

この表は給与差押えの基本的な概念を示しています。法的な根拠に基づいた強制執行手続きであることがわかります。

差押えの対象となる金額と計算方法

給与差押えには法律で上限が定められており、生活必需品に充てるための最低限の金額は差押えから保護されています。

差押え可能額は、手取り給与(税金・社会保険料控除後)を基準に計算されます。

給与額44万円以下の場合 給与額の4分の1までが差押え可能
給与額44万円超の場合 33万円を超える部分の全額が差押え可能
計算の基準となる金額 所得税・住民税・社会保険料などを控除した後の手取り額
養育費請求の場合 特例として給与額の2分の1まで差押え可能

この表は給与差押えの対象となる金額の計算方法を示しています。法律により債務者の最低生活を保障するための配慮がなされています。

給与差押えの手続きの流れ

給与差押えは、法的に定められた手順に従って進められます。

債権者が申立てを行い、裁判所の審査を経て、最終的に勤務先へ差押命令が送達される流れとなります。

1. 債務名義の取得 債権者が裁判や支払督促などによって債務名義を取得します
2. 強制執行の申立て 債権者が債務者の勤務先を特定し、裁判所に給与債権の差押えを申し立てます
3. 差押命令の発令 裁判所が申立内容を審査し、要件を満たしていれば差押命令を発します
4. 第三債務者への送達 勤務先(第三債務者)に差押命令が送達され、債務者にも通知されます
5. 給与からの天引き 勤務先は差押え対象額を給与から控除し、債権者に支払う義務が生じます

この表は給与差押えの手続きの流れを示しています。債権者、裁判所、勤務先(第三債務者)、債務者の4者が関わる法的手続きです。

差押えによる影響と注意点

給与差押えを受けると、経済的な影響だけでなく、社会的な影響も生じる可能性があります。

特に勤務先に債務問題が明らかになることで、職場での立場に影響する場合もあります。

  • 手取り収入が大幅に減少し、生活費の確保が困難になる場合がある
  • 勤務先に債務問題が知られ、職場での評価に影響する可能性がある
  • 一度差押えが始まると、他の債権者も同様の手続きを取るケースが増える
  • 債務が完済されるまで差押えが継続し、長期間にわたる場合がある
  • 差押えに伴う各種手数料が発生し、債務総額が増加する場合がある

この表は給与差押えによって生じる様々な影響を示しています。経済面だけでなく社会生活全般に影響が及ぶことがあります。

差押えへの対応策と回避方法

給与差押えを受けた場合や、差押えの恐れがある場合には、いくつかの対応策があります。

早期に専門家に相談し、状況に応じた適切な債務整理の方法を検討することが重要です。

任意整理 債権者と直接交渉し、分割払いなどの和解案を提示して差押えを回避します
個人再生 再生手続開始決定により差押えが停止され、借金を大幅に減額できる可能性があります
自己破産 破産手続開始決定により差押えが停止され、借金が免責される可能性があります
異議申立 差押えに法的な問題がある場合、裁判所に異議を申し立てる方法もあります

この表は給与差押えへの主な対応策を示しています。状況に応じて最適な債務整理の方法を選択することが重要です。

法律で定められた差押えの制限

法律では債務者の生活を守るため、給与差押えに関していくつかの制限が設けられています。

これらの制限を知っておくことで、不当な差押えから自身を守ることができます。

差押禁止財産 最低生活を維持するために必要な給与部分は差押えから保護されています
差押え限度額 給与の4分の1または33万円を超える部分のみが差押え対象となります
先取特権の原則 複数の債権者がいる場合、先に差押えを行った債権者が優先的に回収できます
差押禁止期間 給与支給日の10日前からは新たな差押命令を発することができません

この表は給与差押えに関する法的制限を示しています。債務者保護の観点から設けられた重要な制限です。

よくある質問

はい、法律で差押えの上限が定められているため、最低限の生活資金は確保されます。

具体的には、手取り給与が44万円以下の場合は最大でも4分の1までしか差し押さえられず、44万円を超える場合でも33万円は手元に残ります。

これは民事執行法で定められた差押禁止債権の規定によるもので、債務者の最低限の生活を保護するための制度です。

給与差押えの場合、勤務先に差押命令が送達されるため、会社に債務問題が知られることになります。

勤務先は第三債務者として差押え対象の給与を債権者へ支払う義務を負うため、経理担当者や上司に知られる可能性が高いです。

会社によっては就業規則で債務整理や差押えを受けた社員への対応が定められている場合もあり、最悪の場合、人事考課や雇用継続に影響することもあります。

給与差押えは原則として債務が完済されるまで継続します。

途中で差押えを止めるには、①債権者と交渉して任意整理に切り替える、②個人再生や自己破産の申立てを行う、③差押えに法的な問題がある場合は異議申立てを行う、などの方法があります。

特に法的な債務整理手続き(個人再生・自己破産)を開始すると、債権者による強制執行は一時的に停止し、手続きが完了すれば差押えも終了します。

はい、差押え前に債務整理を行うことで、給与差押えを回避できる可能性が高いです。

任意整理であれば債権者と分割払いの和解交渉を行い、個人再生や自己破産であれば法的な保護を受けることで、差押えを未然に防ぐことができます。

債務の返済が困難になった段階で、差押えを待たずに早めに司法書士や弁護士に相談することをおすすめします。

まとめ

給与差押えは、債務者が返済を滞った場合に債権者が取る最終的な手段の一つです。法律により差押え可能額には一定の制限が設けられており、手取り給与の4分の1または33万円を超える部分のみが対象となります。

差押えが行われると、勤務先に債務問題が知られるだけでなく、手取り収入が減少して生活に大きな影響を及ぼします。差押えを回避するには、早期に任意整理や法的債務整理(個人再生・自己破産)の手続きを検討することが重要です。

すでに差押えを受けている場合でも、適切な債務整理を行うことで差押えを止め、経済的な再出発を図ることが可能です。

給与差押えの問題でお悩みの方は、杉山事務所の無料相談をお気軽にご利用ください。経験豊富な司法書士が、ご相談者様の状況に合わせた最適な解決策をご提案いたします。

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