清算価値保障の原則(せいさんかちほしょうのげんそく)とは?
清算価値保障の原則とは、再建型の倒産手続(民事再生や会社更生)において、債権者に対して破産手続きによる配当率(清算配当率)を上回る配当を保障しなければならないという重要な法的原則です。
この原則は、債権者の利益を保護しつつ、債務者の再生を可能にするための基本的な考え方です。
清算価値保障の原則の基本概念
定義 | 再生計画で、破産時の配当以上の支払いを保障する原則 |
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適用範囲 | 民事再生、会社更生などの再建型倒産手続 |
目的 | 債権者の利益保護と債務者の再生の両立 |
清算価値保障の原則の重要性
債権者保護 | 債権者が破産時よりも不利にならないことを保証 |
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再生計画の正当性 | 再生計画の公平性と妥当性を担保 |
裁判所の判断基準 | 再生計画認可の重要な判断材料となる |
清算価値の算定
算定基準時 | 原則として再生手続開始決定時(財産評定の基準時) |
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算定方法 | 債務者の資産を清算した場合の価値を評価 |
考慮要素 | 資産の換価価値、負債総額、優先債権の有無など |
清算価値保障原則と再生計画
計画内容 | すべての債権者に清算配当率を上回る配当を提示 |
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債権者の同意 | 多数の債権者の賛成があっても原則を満たす必要がある |
裁判所の判断 | 原則を満たさない計画は認可されない |
清算価値保障原則の適用例
民事再生の場合 | 個人や中小企業の再生手続で適用 |
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会社更生の場合 | 大規模な株式会社の再建手続で適用 |
特別清算の場合 | 解散会社の清算手続でも類似の考え方が適用 |
清算価値保障原則の課題
評価の難しさ | 資産価値の正確な評価が困難な場合がある |
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再生の障害 | 清算価値が高い場合、再生計画の策定が困難になる可能性 |
時間的変動 | 手続の進行に伴う資産価値の変動への対応 |
清算価値保障原則と債務者の対応
資産評価 | 正確かつ適切な資産評価を行う |
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再生計画の工夫 | 清算価値を上回る返済計画を立案する |
債権者との交渉 | 清算価値と再生計画の妥当性について説明・交渉する |
清算価値保障の原則についてのよくある質問
原則として、清算価値保障原則を満たさない再生計画は裁判所によって認可されません。これは債権者保護のための重要な原則だからです。
ただし、債権者全員が同意する場合など、極めて例外的な状況では、清算価値を下回る支払計画が認められる可能性もあります。
しかし、そのような例は非常に稀であり、通常は清算価値を上回る返済計画の策定が必要不可欠です。
清算価値は、再生手続開始決定時を基準として、債務者の全財産を清算(換価)した場合に得られる価値を算定します。
具体的には、不動産、動産、売掛金などの資産の換価見込額から、優先債権や手続費用を控除した金額を、一般債権者への配当可能額として計算します。
この際、不動産の場合は強制売却価額、在庫品は早期売却を前提とした価額など、清算を想定した評価額を用います。正確な評価のために、専門家による財産評定が行われることが一般的です。
清算価値の算定においては、原則として事業継続による将来の収益は含まれません。これは清算価値が「清算時点での換価価値」を基準とするためです。
ただし、事業継続による将来の収益見込みは、再生計画における返済原資として考慮されます。
つまり、事業継続により清算価値を上回る返済を行うことで、清算価値保障原則を満たすことができます。この点が、再建型倒産手続の重要な特徴となっています。
清算価値保障の原則は、債務整理における重要な概念です。この原則を理解し適切に対応することが、再生手続の成功の鍵となります。
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