約定利息(やくじょうりそく)とは?

約定利息とは、借入や貸付の契約において、当事者間で合意して定められた金利のことです。債務者債権者の間で交わされた契約によって具体的に決められた利息の率を指します。

借金問題で悩まれている方にとって、この「約定利息」の理解は非常に重要です。なぜなら、債務整理過払い金請求の可能性を検討する際の判断材料となるからです。

約定利息の基本と特徴

約定利息は借入契約の中でも特に重要な要素の一つです。この利息は契約の自由という原則に基づいて設定されますが、完全に自由というわけではありません。

契約自由の原則 基本的には、借り手と貸し手の合意によって自由に設定することができます。
明示的な合意 契約書や借用書などの書面で明確に定められるのが一般的です。
法的拘束力 有効に合意された約定利息は法的拘束力を持ち、債務者はその支払い義務を負います。

上記の表は約定利息の基本的な特徴を示しています。契約自由の原則に基づいていますが、後述するように法律による上限も存在します。

約定利息と法定利息の違い

約定利息を理解する上で重要なのが、法定利息との違いです。両者は発生の根拠や適用される状況が異なります。

約定利息
  • 当事者間の契約によって個別に定められる利息
  • 契約書や借用書などに明記されることが一般的
  • 契約内容に基づいて決定される
  • 利息制限法による上限の制約を受ける
法定利息
  • 法律によってあらかじめ定められている利息
  • 約定利息が定められていない場合に適用される
  • 民法で定められた年率3%が基本
  • 経済情勢に応じて3年ごとに見直される変動制

この表は約定利息と法定利息の主な違いを示しています。債務整理を検討する際には、どちらの利息が適用されているかを確認することが重要です。

約定利息の法律による制限

約定利息は当事者間の合意で自由に決められますが、利息制限法による上限が設けられています。この上限を超える約定利息は無効となります。

元本額による制限
  • 元本10万円未満:年20%まで
  • 元本10万円以上100万円未満:年18%まで
  • 元本100万円以上:年15%まで
制限超過の効果
  • 上限を超える約定利息は無効となり、上限金利までしか請求できない
  • 既に支払われた超過分は元本への充当とみなされる
  • 元本完済後に超過利息を支払っていた場合は過払い金となる

この表は利息制限法による約定利息の上限と、超過した場合の法的効果を示しています。多くの債務整理や過払い金請求はこの制限に基づいて行われます。

グレーゾーン金利とは

かつては利息制限法の上限と出資法の上限(年29.2%)の間にあった金利帯を「グレーゾーン金利」と呼んでいました。2010年の貸金業法の完全施行により、このグレーゾーン金利は実質的に撤廃されました。

しかし、グレーゾーン金利時代に借入をしていた方は、過払い金が発生している可能性があります。債務整理の際には、この点も確認することが重要です。

約定利息と債務整理の関係

債務整理を行う際には、約定利息が重要な要素となります。債務整理の種類によって、約定利息の扱いは異なります。

任意整理と約定利息
  • 将来の約定利息について引き下げ交渉が可能
  • 一般的に年5%〜10%程度まで引き下げられることが多い
  • 過去の高金利部分については過払い金として返還請求できる可能性がある
個人再生と約定利息
  • 再生計画認可後の約定利息は大幅に引き下げられる
  • 再生手続開始決定時点での利息は停止する
  • 再生計画では元本の圧縮が中心となる
自己破産と約定利息
  • 未払いの約定利息も含めて全額免責の対象となる
  • 過去に支払った高金利部分の返還請求権も破産財団に組み込まれる

この表は債務整理の各手続きにおける約定利息の扱いを示しています。どの債務整理方法を選ぶかによって、約定利息に関する対応が異なります。

過払い金と約定利息の関係

利息制限法の上限を超える約定利息で支払いを続けていた場合、過払い金が発生している可能性があります。過払い金請求は、債務整理の一環として行われることも多いです。

  1. 利息制限法の上限を超える約定利息で支払いをしていたか確認
  2. 超過利息分を元本に充当して再計算
  3. 元本完済後も支払いが続いていれば、その部分が過払い金となる
  4. 過払い金請求権の消滅時効(10年)内であれば返還請求可能

上記のリストは過払い金が発生するメカニズムと請求の流れを示しています。専門家による債務の計算が必要な複雑な手続きです。

約定利息に関する注意点

約定利息に関しては、借入時から返済時まで注意すべき点がいくつかあります。これらを理解しておくことで、将来的な債務問題を予防できます。

契約時の確認
  • 契約書に記載された約定利息の率を必ず確認する
  • 実質年率(APR)で表示されているか確認する
  • 利息の計算方法(単利か複利か)を確認する
書面での明示
  • 貸金業者は約定利息を契約書面に明示する義務がある
  • 明示がない場合は法定利息しか請求できない可能性がある
利息計算の確認
  • 毎月の返済額のうち、元本と利息の内訳を確認する
  • 返済明細書や取引履歴を保管しておく
法令遵守
  • 貸金業者は利息制限法を遵守する義務がある
  • 違法な高金利での貸付は行政処分や刑事罰の対象となる

この表は約定利息に関する重要な注意点をまとめています。特に借入契約を結ぶ際は、約定利息の内容をしっかり確認することが大切です。

よくある質問

利息制限法の上限を超える約定利息は無効となり、上限金利までしか法的に有効な利息とはなりません。

既に超過分を支払っていた場合、その超過分は元本に充当されたものとみなされます。つまり、元本の返済が進んでいたことになります。

元本が完済した後も支払いを続けていた場合は、その部分が過払い金となり、返還請求が可能です。

契約書に約定利息の記載がない場合は、原則として法定利息が適用されます。現在の民法では法定利率は年3%です。

ただし、取引の性質によって商事法定利率が適用される場合もあります。商事取引の場合は年6%の法定利率が適用されることがあります。

貸金業者による貸付の場合、利息の約定が不明確であれば、貸金業法違反となる可能性もあります。

債務整理の方法によって扱いが異なります。任意整理では将来の約定利息の引き下げ交渉が行われ、通常は年5%〜10%程度に減額されます。

個人再生の場合は、再生計画で将来の利息負担が大幅に軽減されます。再生手続開始決定時点で利息は停止し、再生計画では元本の圧縮が中心となります。

自己破産では、未払いの約定利息も含めて全額免責となります。債務者は利息の支払い義務から完全に解放されます。

過払い金の請求権には10年の消滅時効があります。最後に取引をした日または最後に過払い金が発生した日から10年間です。

ただし、貸金業者が廃業している場合や、取引から長い年月が経っている場合は、取引履歴の取得が難しくなることがあります。

また、貸金業者が任意に応じない場合は訴訟を提起する必要があり、その際には証拠が重要となります。早めに専門家に相談することをおすすめします。

約定利息は通常の借入期間中に発生する利息で、契約通りに返済している限り適用されます。一方、遅延損害金は返済が遅れた場合のペナルティとして発生します。

遅延損害金の利率は約定利息より高く設定されることが一般的です。ただし、遅延損害金にも法律による上限があります。

利息制限法では、遅延損害金の上限は約定利息に年14.6%を加えた利率とされていますが、元本に応じた上限(20%、18%、15%)を超えることはできません。

まとめ:約定利息の理解は債務問題解決の第一歩

約定利息は借入契約における重要な要素であり、債務整理や過払い金請求を検討する際の重要な判断材料となります。契約自由の原則に基づいて設定されますが、利息制限法による上限が存在します。

利息制限法の上限を超える約定利息は無効となり、超過分は元本に充当されたものとみなされます。このメカニズムにより、過払い金が発生することがあります。債務整理では、債務整理の種類に応じて約定利息の扱いが異なります。

任意整理では将来利息の引き下げ交渉が可能で、個人再生では再生計画による利息負担の軽減、自己破産では未払い利息も含めた免責が行われます。借入時には約定利息の率や計算方法を十分に確認し、返済中も取引履歴を保管しておくことが重要です。

約定利息や債務整理について不明点がある方、過払い金が発生している可能性がある方は、杉山事務所の無料相談をお気軽にご利用ください。専門家が丁寧に状況を分析し、最適な解決策をご提案いたします。

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