自己破産とは?知っておくべきデメリットと得られるメリット
自己破産と聞くとネガティブなイメージを持っている人がいるかもしれません。
確かに、自己破産にデメリットはありますが、以下の大きなメリットがあります。
今ある借り入れをゼロにできる
督促を止められる
給与の差し押さえを止められる
借り入れがゼロになれば、今まで返済に回していた収入を自由に使えるようになりますし、督促に悩まされることもなくなります。
自己破産を避けて借り入れを滞納してしまうと、裁判を起こされて差し押さえをされるなど大きなデメリットをまねくことになってしまうので、まずは借り入れを少しでも減らすことが必要です。
どうしても自己破産のデメリットが心配な場合は、杉山事務所にご相談いただければ自己破産以外の借り入れ減額方法もお伝えできますので、無料相談をご利用ください。
自己破産もくじ(メニュー)
1)借り入れをゼロにできる自己破産とは
自己破産とは、借り入れをゼロにできる唯一の方法で、国が認めた債務整理(借り入れを減らす手続きの総称)の1つです。
自己破産には「破産」(財産を処分して借り入れをできるだけ返済する)と、「免責」(借り入れをゼロにする)という二つの手続きがあり、同時に進められます。
自己破産の手続きは、お住まいの地域を管轄している地方裁判所でおこなわれ、判決が決まれば、業者から何を言われてもくつがえすことはできません。
自己破産というと、すべての財産を処分されてしまうと思っている方が多いと思いますが、すべて失うと自己破産をしたあと生活ができなくなりますので、生活するうえで必要最低限の財産は残してもらえます。
また、借り入れを減らすなら自己破産の他にも方法があって、返済状況によって適した方法が変わります。
任意整理
残っている借り入れを3年程度で完済できる場合個人再生
残っている借り入れを約1/5に減額して3年程度で完済できる場合
自分では自己破産しかないと思っていても、ご自身の返済状況によっては別の方法が適している可能性があります。
杉山事務所では、借り入れに関する相談を無料でおこなっていますので、借り入れのお悩みがあれば一人で悩まず、ご相談ください。
2)自己破産できる条件
自己破産をおこなうには条件があります。
- 支払い不能であること
自己破産は、「どうやっても返済ができない状態」=「支払い不能」となった場合のみおこなえる手続きです。
支払い不能に関して明確な基準はありませんが、現在の借り入れを3~5年程度で返済できる場合はほとんど支払い不能と認められません。
自己破産ができない条件
自己破産には「破産」と「免責」があり、「自己破産ができない」とは、免責が許可されないことをさします。
破産ができても免責が許可されなければ借り入れはゼロになりませんので、自己破産をする意味がなくなります。
免責不許可事由(免責が許可されない理由)はいくつかあるので、あてはまるかどうか確認してください。
借りたお金の使い道に問題がある場合
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・競馬や競輪、パチンコ、株取引、FX、不動産投資をするのにお金を使った方
・ブランド品の購入、趣味や娯楽に使うためにお金を使った方
・返せないとわかっていてお金を使った方
以上のような使い方をしていた場合は、免責不許可事由に該当します。
ただし、免責不許可事由があったとしても裁判所の裁量によって免責が許可される可能性もありますので、司法書士や弁護士に相談しましょう。
破産手続きを妨害した場合
破産手続きの際は、所有している財産をすべて開示する必要がありますが、財産を隠してしまうと破産手続きの妨害にあたり、免責が許可されなくなります。
破産手続き前に、財産を知人や親族に贈与した場合も財産隠しとされます。
また、自己破産をする際はすべての債権者に平等に対応する必要があるので、A社には借り入れを全額返済してB社には半分返済、C社には返済しないといった不平等な対応をしてはいけません。
破産手続きの際、すべての債権者情報を提出しますが、一部の債権者を隠すことも不平等な対応にあたります。
債権者に対して不平等に対応してしまうと、破産手続きの妨害にあたり免責が許可されない可能性がありますので注意してください。
自己破産できても支払いが免除されないお金
自己破産が成立して免責が許可されると、借り入れしていたお金は基本的に返済する必要はありません。
ただし、返済を免除されないお金もあって、免責が許可されても支払いの義務が残りますので、確認しておきましょう。
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・税金や国民健康保険料などの租税(滞納している分も含む)
・破産者の不法行為が原因で請求された損害賠償金
・破産者が暴行をして傷害を与えた被害者に対する損害賠償金
・養育費
・罪を犯したときに罰として取られるお金
・従業員の給与(個人事業主などの場合)
・破産手続きの際に申告し忘れていた債権者の借り入れ
3)自己破産のデメリット・メリット
- デメリット
- 財産を処分しなければならない
- ブラックリストにのる
- 官報にのる
- メリット
- 借り入れがゼロになる
- 督促を止められる
- 給与などの差し押さえが止められる
自己破産のデメリット
財産を処分しなければならない
自己破産をするときは、財産を処分しなければいけません。
ただ、すべての財産を処分してしまうと生活ができなくなりますので、必要最低限の財産は残してもらえます。
- 生活に必要最低限の財産
- ・99万円以下の現金 ・衣 ・寝具 ・台所用具 ・畳及び建具 ・食料 ・燃料 ・給与 ・退職金の3/4 ・学校などの教育施設で使用する書類及び器具 ・発明品または著作にかかわるものでまだ公表していない物 ・義手、義足など身体の補助になる物 ・農業や漁業で使用する器具 など
ブラックリストに載る
自己破産をするとブラックリストに載ります。
ブラックリストとは、信用情報機関の信用情報に事故情報が載るということです。
返済の延滞も信用情報に載るため、滞納したことがある方はすでにブラックリストに載っています。
滞納をしたことがある方で今後も返済が厳しい方は、ブラックリストを気にする必要はありませんので、借り入れを放っておかず、何か手を打つべきです。
官報にのる
官報は、国が発行する新聞のようなものです。
自己破産をすると、官報に手続きをした裁判所・手続きをした日時・破産者の名前・破産者の住所が載ります。
しかし、官報を知らない人が大半ですので、官報に載ったことにより知人にばれる心配はほとんどありません。
自己破産のメリット
借り入れをゼロにできる
自己破産の最大のメリットは、借り入れをゼロにできるということです。
借り入れがゼロになることで大変だった返済から解放されます。
毎日のように悩まされていた借り入れについて考えることもなくなりますので、経済的だけではなく精神的にも楽になります。
督促を止められる
返済を延滞していて業者から督促が来ている場合、自己破産の手続きを始めると業者からの督促は止まります。
司法書士や弁護士に依頼すると、自分で手続きを進めるよりも早く督促が止まりますので、早く督促を止めたい場合は司法書士や弁護士に相談してください。
給与の差し押さえが止められる
すでに給与などが差し押さえられている、もう少しで差し押さえられそうな場合、「債権差押手続中止の上申告書」というものを提出すると破産手続きが終わるまで差し押さえを停止することができます。
4)手続き前に確認すべき自己破産の注意点
車を処分する可能性がある
自己破産したときの車の価値や支払い状況によって、処分するかしないかが決まります。
ローンの支払いが終わっていない場合、車の所有権はローン会社にありますので、自己破産をすると車はローン会社に回収されます。
ローンの支払いが終わっていて、査定額が20万円以上の場合は、裁判所が車を回収して換価する可能性が高いです。
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・車のローンの支払いが終わっている
・自己破産時の車の査定額が20万円未満
以上の二点を満たせば手元に車を残すことができます。
住宅を処分する必要がある
住宅ローンが残っている場合は、原則としてローン会社に住宅を処分されます。
ローンが残っていない場合でも、高価な財産ですので、査定額が20万円未満になることは少なく、処分の対象になることがほとんどです。
自己破産の手続き後、住宅を換価する場合競売となるので、通常の売却よりも安い金額で住宅を売ることになります。
競売で安く住宅を売るより、自己破産手続き前に住宅を売却して現金を手にし、自己破産の費用に使用したほうがいい場合もありますので、住宅をお持ちの場合、司法書士や弁護士に相談して最適な方法で処理するのがベストです。
保険が解約になる可能性がある
加入している保険を確認し、解約返戻金が20万円以上ある場合、解約が必要になります。
破産開始決定後であれば、保険に再加入することができますが、保険の加入条件(病歴や年齢など)に満たない場合は加入することができません。
保証人が借り入れの請求をされる
自己破産は、すべての借り入れを平等に精算する必要があり、特定の借り入れだけ手続きをしないということはできません。
精算する借り入れに保証人がついている場合、自己破産をすると残りの借り入れは保証人が支払うことになります。
銀行口座を凍結される
預貯金口座を持っている銀行から、カードローンや住宅ローンでお金を借りている場合、自己破産の手続きをすると口座が凍結され、残高がある場合は借り入れと相殺されることになります。
また口座を凍結されると出金ができなくなり、銀行によっては入金もできなくなります。
給与の振り込みを該当口座にしている場合、給与が入っても出金できなくなりますので、自己破産手続き前に、振込口座を変更しておく必要があります。
自己破産した銀行以外の口座は自己破産後も入金、出金できますし、新しく口座開設もできますので安心してください。
破産手続き中に一部就けない職がある
弁護士、司法書士、税理士、行政書士などの士業や警備員、旅行業務、生命保険募集人、取締役などの仕事は破産手続き中一時的に就けなくなります。
仕事に就けなくなる期間は、破産手続き開始から免責が許可されるまでの間です。
また、法律上問題なく就ける仕事でも、就職する際に交わした雇用契約に破産についての記載がある場合は雇用契約に準じますので事前に確認しておきましょう。
自己破産をすると今の職に就けなくなるのか不安な方は司法書士や弁護士に相談して下さい。
破産手続き中の郵便物は破産管財人に転送される
破産手続き中の郵便物(日本郵便のものだけ)が破産管財人に転送されることがあります。
破産者が財産を隠していないか、債権者に漏れがないかを破産管財人が確認するためです。
ただし、すべての裁判所でおこなっているわけではなく、裁判所によって対応が変わりますので、不安な方は司法書士や弁護士に相談してください。
破産手続き中のみ居住地を離れられない
破産手続き中は破産管財人や裁判所から、借り入れをしたときの状況や理由などについて説明を求められることがあり、すぐに対応する必要があります。
説明を求められたときに連絡がつかない、近くにおらずすぐに対応ができないということがないように、基本的に破産手続き中は居住地にいることになります。
ただし、裁判所が許可を出した場合は居住地を離れてもよくなりますので、転居したり、旅行に行ったりする場合は裁判所に伝えて許可をもらってください。
退職金が借り入れの返済にあてられる
自己破産をする場合、退職金を没収される可能性があり、退職金をもらう時期によって没収される金額が変わります。
自己破産手続き前に退職金をもらっている場合は、預金もしくは現金になっているはずですが、預金、現金は手元に残せる額に限りがありますので、残せる額を超える分が没収され借り入れ返済にあてられます。
自己破産手続中も在職していて、将来退職金をもらうことになっている方は、破産手続き開始時に退職した場合、いくら退職金が発生するか(退職金予定額)で手元に退職金がなくてもが没収されるかが決まります。
退職金予定額の1/8の金額が20万円以上の場合は没収されることになります。
退職日が破産手続きと近い場合は、1/8ではなく1/4になるので退職が近い方は気をつけましょう。
裁判所に提出が必要なため、退職金予定額がいくらになるか会社に問い合わせて「退職金見込額証明書」とよばれる書面をもらってください。
会社から書面がもらえない場合は、退職金の算出方法が書いてある雇用契約書、就業規則、退職金規程などの書類と、退職金の計算過程を書いた計算書を裁判所に提出することになります。
遺産が借り入れの返済にあてられる
相続した遺産については、原則借り入れの返済にあてられますが、相続のタイミングや価値によっては手元に残すことができます。
破産手続き開始決定前に相続が発生した場合
遺産の価値が20万円未満の場合
手元に残せる可能性があります。
遺産の価値が20万円以上の場合
借り入れの返済にあてられます。
遺産以外に高価な財産がない場合は管財事件にならないように相続放棄をするほうがいいでしょう。
破産手続き申し立てから破産手続き開始決定の間に相続が発生した場合
遺産の価値が20万円未満の場合
手元に残せる可能性があります。
遺産の価値が20万円以上の場合
借り入れの返済にあてられます。
申し立てから開始決定の間に相続が発生した場合、相続放棄ができず管財事件になります。
管財事件になると裁判費用が高額になる、裁判期間が延びるなどのデメリットが発生しますので、1番タイミングの悪い相続といえます。
破産手続き開始決定後に相続が発生した場合
相続した財産は価値がいくらであってもすべて手元に残せます。
破産手続き開始決定後に手にした財産は新得財産と呼ばれ、処分しなくてもいい財産として認められますので、相続した財産を処分する必要はありません。
遺産の相続がある場合は司法書士や弁護士に相談して最善の方法で対処しましょう。
個人事業主や自営業者の事業継続は難しい
個人で事業をしている場合、使用している設備、機材、資材や在庫品などが処分しなければならない財産とみなされるかが重要です。
自己破産しても処分しなくてもいい事業に関する財産について、表にしてくわしくお伝えします。
他の事業に関しては、どのような仕事をしているか、どれくらいの利益が出ているかで財産とみなされるか決まりますが、個人で判断するのは難しいので、司法書士や弁護士に相談してください。
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・農業を営む者の農業に欠くことができない器具、肥料、家畜、飼料、種子など
・漁業を営む者の漁網、その他の漁具、えさ及び稚魚など
・技術者、職人、労務者の業務に欠くことができない器具その他の物(商品を除く)
・発明又は著作に係る物で、まだ公表していないもの
売掛金は借り入れの返済にあてられる(個人事業主などの場合)
売掛金は財産になるため、没収されて債権者に配当されます。
ただし、売掛金がなければ生活できない状況の場合は裁判所が残せる財産として認める場合があります。
裁判所により判断がわかれますので、売掛金の処理については司法書士や弁護士に任せるのが一番です。
2回目以降の自己破産は免責が難しい
1回自己破産をした後、7年経過すれば再度自己破産の手続きはできますが、1回目よりも裁判官の判断が厳しくなるので、免責が難しくなります。
裁判官との面談方法や書類の書き方などで免責される可能性が上がりますので、2回以上自己破産する場合は、司法書士や弁護士に依頼したほうがいいです。
5)誤解されている自己破産のリスク
家族のクレジットカードやローン契約、借り入れに影響ありません
家族が保証人になっていなければ、自己破産をしても家族のクレジットカードやローン、借り入れに影響をあたえることはありません。
また、名義がご家族の家、車に影響を与えることもありません。
家族の財産にも影響はでません
自己破産は個人でおこなうもので、家族単位でおこなうものではありませんので、自己破産をしていない家族の財産に影響はでません。
しかし、ご家族が保証人になっている場合は、残りの借り入れを保証人が返済しなければならないため、同じく自己破産をすることになる場合も多く、この場合は保証人になっている家族に影響がでます。
家、アパート、マンションの賃貸契約に影響ありません
借主が自己破産したか、貸主や賃貸仲介業者が調べることはむずかしいので、賃貸契約中の物件を追い出されることはありません。
ただし、新規で賃貸契約をするときに保証会社をたてる場合、保証会社がクレジットカードなどを取り扱う信販会社ですと、信用情報が確認できるので自己破産したことがわかり、契約できない場合があります。
運転免許は失効しません
自己破産をすると車が処分されるので、同時に運転免許証もとりあげられると思っている方が多いですが、運転免許証はとりあげられませんし、運転免許証に自己破産をしたことも記載されませんので安心してください。
会社は解雇されません
会社からお金を借りていれば別ですが、ほとんどの場合、自己破産したことが会社にばれることはありませんし、自己破産がばれたとしても、法律上は解雇されません。
就職や転職ができます
自己破産をしたことを履歴書に書く必要はありませんし、面接の際に言う必要もありません。
ほとんどの場合、自己破産したことが応募先にばれることはありませんが、信用情報を閲覧できる信販会社や金融機関、官報を定期的に閲覧している公務員などの職業は、他の職業と比べるとばれる可能性は高くなります。
就職や転職をする際は信販会社や金融機関、公務員などの職業は避けたほうが無難です。
自己破産したことが戸籍にのることはありません
自己破産をすると戸籍に履歴がのって自分や子供の結婚などに影響があると誤解されていますが、自己破産をしても戸籍にのることはありませんので、安心してください。
携帯電話やWi-Fiなどプロバイダ契約は解約にならない
自己破産をするとクレジットカードが解約になるので、利用料金の支払いをクレジットカードにしている方は支払方法を変更する必要がありますが、携帯電話やWi-Fiなどのプロバイダ契約は解約になりませんし、キャリア決済やauウォレットのプリペイド機能なども問題なく使用できます。
ただし、利用料金を滞納していたり、機種の分割払いが残っていたりする場合は、プロバイダ契約を解約されてしまいます。
新規で契約する場合や機種変更する場合は、機種代の分割払いができないので一括で購入が必要です。
海外旅行に行けます
破産手続き中は、裁判所の許可なく居住地を離れることができませんが、手続きが終了すれば、居住地を離れても問題ありません。
国内だけでなく海外にも渡航可能ですので、海外旅行も問題なく行けます。
選挙権はなくなりません
自己破産をすると選挙権がなくなるといううわさがありますが誤解です。選挙権はなくなりませんので安心してください。
年金を受け取ることができます
自己破産をしても、国民年金・厚生年金・共済年金などの公的年金は差し押さえされませんし、年金を受け取る権利を失うこともありませんので、受給が可能です。
ただし、税金を滞納していると全額ではありませんが、差し押さえられるので注意が必要です。
また、自己破産をする債権者に銀行がある場合、該当銀行の口座が凍結されるため、入出金ができなくなります。
もし自己破産する銀行の口座を年金の振込先にしているのであれば、自己破産前に振込先を変更する必要があります。
取締役になることができます
会社と取締役は委任契約で結ばれていて、自己破産をすると委任契約は一旦解除されます。
自己破産後の株主総会で再任されれば、問題なく取締役になれますが、会社で融資を受けることがむずかしくなります。
6)2種類ある自己破産の手続きの流れと期間と費用
自己破産には「管財事件」と「同時廃止」という二つの手続きがあります。
財産がある場合は管財事件に、財産がない場合は同時廃止になります。
管財事件になると、同時廃止より手続きが増えたり費用が余計にかかったりします。
自己破産手続きをする前に、自分が管財事件になりそうか同時廃止になりそうかわかっておくと、流れや期間、費用などが予測できます。
また、財産があっても自己破産手続き前に適切に財産を処理できれば、同時廃止になる可能性があるので、自分が管財事件か同時廃止どちらになるか不安な方は、杉山事務所へご相談ください。
管財事件の場合
管財事件とは
管財事件は、財産を持っている人が対象になる破産手続き方法で、裁判所から「破産管財人」が選任され、破産者の状況や財産を調査、管理、換価することになります。
破産管財人は弁護士が選任されることがほとんどで、報酬が必要になるため破産手続きにかかる費用が高くなる傾向があります。
管財事件になる基準
管財事件は、財産がある人が対象になる手続き方法ですが、基準になるのは破産財団と呼ばれる財産です。
自己破産でいう財産は自由財産(処分しなくてもいい財産)と破産財団(処分しなければならない財産)に分けられ、自由財産は、「生活に必要最低限の財産」と新得財産(破産手続き開始決定後に取得した財産)が該当し、破産財団は自由財産以外の財産をさします。
破産財団を自由財産にする「自由財産の拡張」という方法もあり、裁判所が自由財産の拡張を認めれば、処分しなくてもいい財産を増やすことができます。
自由財産の拡張には一律の判断基準がなく、裁判所は生活状況や収入など様々な要因や、各裁判所で定めている基準から自由財産の拡張を認めるか判断します。
どれくらいの破産財団を所有していると管財事件になるか、地方裁判所ごとに基準が少しずつ違うので、東京地裁と大阪地裁の基準を紹介します。
東京地裁の場合
・破産財団にあたる項目で20万円以上の財産を持っている場合
・免責不許可事由がある場合
・現金を33万円以上持っている場合
大阪地裁の場合
・破産財団にあたる項目で20万円以上の財産を持っている場合
・免責不許可事由がある場合
・現金と預金合わせて50万円以上持っている場合
東京地裁、大阪地裁ともに自由財産である99万円以下の現金の項目がありますが、各地裁の基準以上の現金、預金を所持していると他にも財産を持っている可能性が否定できないという理由からです。
東京地裁、大阪地裁としては、破産管財人を選任して提出されている財産以外になにもないかを調査する必要があると考えています。
自己破産を考えていて財産がある場合、自己破産手続き前に適切に財産を処理できれば、管財事件ではなく同時廃止で自己破産できる可能性があるので、司法書士や弁護士に相談するのがベストです。
管財事件の流れ
1.自己破産の申し立て
書類を準備して、「破産」と「免責」の手続きを申し立てます。
2.破産審尋
裁判所に行って、なぜ破産するのかなど詳しい話を裁判官とします。
3.破産手続き開始決定・破産管財人選
裁判所が、破産をすることに問題がないと認めた場合、破産手続きを開始するという決定を下します。
そして、1で申し立てした際に提出した書類から財産があるとされた場合は、管財事件となり、開始決定と同時に破産管財人が選任されます。
4.破産管財人と面談・調査
3で選任された破産管財人と面談し、財産について詳しく話します。
破産者の話や提出した資料をもとに、破産管財人は財産の調査をおこない、処分する財産を適切に管理、換価します。
さらに、破産者に免責不許可事由があるかも調査をされます。
5.債権者集会
破産管財人が調査した結果や、財産を換価した結果を債権者に伝えます。
配当できるものがあれば、各債権者に詳細を伝え、配当が終了していない場合は、配当が終了したと伝える日を再度もうけます。
破産管財人が伝えた内容で債権者が同意して、配当が終了すれば破産手続きは廃止となり、そのまま免責審尋にうつります。
免責審尋とは、破産者の免責について破産管財人から裁判官へ意見を述べる場のことです。
6.免責許可決定
5でおこなった免責審尋をもとに、裁判官は免責許可決定を出します。
免責許可決定がでれば、借り入れはゼロになります。
管財事件の期間
自己破産手続きの申し立てをしてから1年ほどかかります。
所有財産が多い、免責不許可事由があるなど破産管財人が調査をする項目が多ければさらに長くなりますし、債権者集会で債権者が異議を申し立てると、何度も債権者集会を開くことになり長引きます。
業者はあまり異議申し立てをしませんが、債権者が個人の場合、異議を申し立てることがあります。
管財事件の費用
管財事件では、裁判所に払う費用が大きくなります。
裁判所により前後はありますが、費用は50万円くらいになるでしょう。
杉山事務所にご依頼いただける場合は、事務所費用として25万円がかかります。
個人事業主や、過払い金が出る場合などは事務所費用が前後しますので、詳しい金額が知りたい方は無料相談からお問い合わせください。
同時廃止の場合
同時廃止とは
同時廃止は、財産がない人が対象になる手続き方法で、破産管財人も選任されないので、財産の調査などもなく破産手続き開始と同時に破産手続き廃止になります。
個人の自己破産は同時廃止になることが多いです。
同時廃止になる基準
破産法で「裁判所は、破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足すると認めるときは、破産手続開始の決定と同時に、破産手続廃止の決定をしなければならない。」と決められています。(破産法第216条)
ようは破産財団で裁判費用が支払えない場合、同時廃止になるということです。
同時廃止の流れ
1.自己破産の申し立て
書類を準備して、「破産」と「免責」の手続きを申し立てます。
2.破産審尋
裁判所に行って、なぜ破産するのかなど詳しい話を裁判官とします。
3.破産手続き開始決定・破産手続き廃止決定
同時廃止の場合、管財事件のような裁判費用が発生すると、財産がなくて払えない、払えたとしても自己破産後生活ができなくなるため、裁判を簡略化することになります。
破産管財人も選任されず、財産の調査などもおこなわれませんし、財産を換価して債権者に配当することも不可能なので、破産手続き開始決定と同時に破産手続きは廃止になります。
4.免責審尋
同時廃止の場合、ほとんど免責になることが決定しているため、名前や住所の確認、申立書に相違がないか確認されるくらいです。
あとは、免責された後の生活についての注意点などを聞くだけで5~10分で終わります。
破産者が多くいる裁判所では、破産者が複数人いて裁判官が一人いるという集団審尋という方法をとることもあります。
5.免責許可決定
管財事件と同じく、免責審尋をもとに免責許可決定が出されます。
同時廃止の期間
自己破産の手続きの申し立てをしてから3~4カ月ほどかかります。
管財事件と違い、破産管財人が調査をする時間や債権者集会を開く必要がないため、管財事件と比べると期間は短くなります。
同時廃止の費用
同時廃止は裁判費用を支払うことが難しい人に対してつくられた手続きなので、管財事件と大きく違って、裁判費用は2万円前後(裁判所によって少し変わります)になります。
杉山事務所にご依頼いただける場合は、事務所費用として25万円がかかります。
個人事業主や、過払い金が出る場合なども同じなので、詳しい金額が知りたい方はご相談ください。
7)最適な方法で借り入れの問題を解決する杉山事務所
自己破産には、どうしても悪いイメージがついて回るので、誰にも相談できずずっと一人で悩み続けている方もいるのではないでしょうか。
自己破産で悩まれて杉山事務所に相談される方は、現在の借り入れに対してどう対処したらいいのかわからなくなってしまい、途方にくれてしまった方が大半です。
相談をお受けすると、すべての方が自己破産になっているわけではなく、経験豊富な司法書士と話すことによってほかの解決方法が見つかり、借り入れを清算する方もいます。
もちろん、借り入れの状況により自己破産を選択する方もいらっしゃいますが、デメリットやメリット、報酬にご納得いただき不安なく手続きに進んでいます。
杉山事務所では、無料でご相談を承っていて、経験豊富な司法書士があなたの力になりますので、一人で悩まずご相談ください。
債務整理・借金減額は無料相談をご利用ください。