過払い金請求の消滅時効10年を中断するには?期限を過ぎても請求する方法

過払い金請求の期限が迫っているなどの広告を目にすることがありますが、過払い金には時効があります。2020年に時効になると騒がれたこともありますが、時効期限は起算日から10年なので、過払い金請求ができなくなる日(消滅日)は人それぞれ違います。

時効の起算日については返済中の取り引きなのか完済している取り引きか、また、借り入れ返済を繰り返している取り引きなのかによって変わってきます。知らない間に時効期限が過ぎていて過払い金請求ができないことのないよう、手続きは早めにおこなうことをおすすめします。

また、すでに10年の時効期限を過ぎてしまっている方でも実は過払い金請求ができることもあります。消滅時効に関しては正しい知識を身につけ、不安な場合は専門家に相談してください。

過払い金請求は10年の期限で消滅時効になります

現在返済中の方は最後の取り引きがおこなわれた日、完済している方は最終返済日から10年の期間が経過すると、過払い金の消滅時効を迎えるため過払い金請求の手続きができなくなります。

基本的に返済中の方で毎月返済をおこなっている場合は、時効になることはありません。しかし、返済を10年以上放置している場合は、最後に取引をおこなった日から10年が経過すると時効が成立し、過払い金請求ができなくなってしまいます。

すでに完済した方は完済から10年経っていないか一度調べてみることをおすすめします。なお、完済から10年経っていないか調べる方法は、以前借り入れをしていた貸金業者から取引履歴を取り寄せることでわかります。

2010年6月10日の法改正により、出資法の上限金利が29.2%から20%に引き下げられました。その影響で、2010年から10年後の2020年にすべての過払い金の時効が成立するという噂もありましたが、過払い金の時効は2020年ではなく、最後に取り引きをした日から10年です。

過払い金請求は、不当利得返還請求(法律上の正当な理由もなく利益を得て、他人に損失を及ぼした場合、不正に取得した分を返還するよう請求できる権利)のひとつです。

貸金業者に対し、法定金利以上の払いすぎていた利息分を返還するよう請求すること(過払い金請求)は、時効を迎えていなければ誰でも請求できる権利ですので損をしないためにも必ず手続きをしてください。

時効の起算日は「最後に借り入れ・返済をした日」が基本

起算日とは期間を数えはじめる最初の日のことで、過払い金請求の時効は現在返済中の方とすでに完済している方とでは起算日が異なります。

起算日から10年の期限が経っていない場合は過払い金請求ができます。時効が迫っている場合は、1日でも早く過払い金請求をおこなってください。

同じ貸金業者で借り入れと完済を繰り返している場合は起算日が異なる

一度完済をすると時効のカウントが進んでしまうため、借り入れと完済を繰り返している場合は、完済の度に起算日が生まれます。ただし、完済をしたら必ずしも時効の起算日が生まれるわけではなく、取り引きが「一連」か「分断」しているかによって変わります。

「一連」か「分断」かの判断は、完済してから次の借り入れまでにどのくらいの空白期間があるか、基本契約書を結びなおしているかなど、さまざまな要因があります。

この一連か分断かの判断は、過払い金請求の争点になりやすいポイントです。空白期間が1年以内の場合や、基本契約書を結びなおしていない場合は、一連と判断されることが多いです。

一連と分断の時効の起算日

分断された取り引きの場合、時効の起算日はそれぞれ完済した日です。したがって、10年以上前に完済した借り入れの場合には、すでに時効が成立しています。

たとえば、①1度目の借り入れ日が2005年1月で完済日が2007年1月、過払い金が20万円。②2度目の借り入れ日が2007年12月で完済日が2015年1月、過払い金が30万円あったとします。

①と②の取り引きが「分断した取り引き」とみなされた場合、①の取り引きは2017年1月に時効が成立しているため、過払い金の請求はできません。したがって、請求できる過払い金は、②の取り引きのときに発生した過払い金20万円のみです。

しかし、①と②の取り引きが「一連の取り引き」とみなされた場合、①の時効の起算日は②の完済日である2015年1月となるため、時効が成立するのは2025年1月となります。つまり、①の取り引きの際に発生した過払い金も請求の対象となり、過払い金50万円を請求できます。

同じ賃金業者から借り入れと完済を繰り返している場合、改めて基本契約を交わしていないことも多く、一連の取り引きとして認められる可能性があります。また、クレジットカードでキャッシングしている場合は、貸金業者から借り入れている場合に比べると、「分断した取り引き」とみなされる可能性は低くなります。

ただし、リボ払いではなく1回払いを利用していた場合には、空白期間が短くても一連の取り引きとみなされる可能性があります。自分の借り入れが「一連の取り引き」なのか、それとも「分断した取り引き」なのかを判断することは大変むずかしく、最終的には裁判官の判断に委ねられます。

杉山事務所は過去の手続きや判例から、ある程度判断することができます。借り入れと返済を繰り返していて基本契約書もなくわからない場合はお気軽にご相談ください。

2020年の民法改正で過払い金の時効は早くなることも

2020年4月1日から施行された民法改正により、消滅時効の規定が変わりました。民法が改正される前の消滅時効の規定は、権利を行使することをできるときから10年でしたが、民法の改正により次のうちのどちらか早い方で時効が成立します。

たとえば完済日が2020年であったとしても、過払い金があることを2020年の時点で知っていた場合には、時効が成立するのは10年後ではなく、5年後の2025年になる可能性があります。

ただし、民法改正の施行日以前(2020年3月31日)までに完済して発生した過払い金の場合、原則として改正前の「最後の返済日から10年」という規定が適用されます。

期限間近の時効を中断する方法

時効が成立してしまうと基本的に過払い金は請求できなくなりますが、次の方法で中断させることができます。

ただし、どちらも手続きにはある程度の時間が必要です。特に時効成立の期限が迫っているような場合は司法書士や弁護士など専門家に相談することをおすすめします。

過払い金請求書を貸金業者に送る(裁判外の請求)

貸金業者に対し「過払い金の請求」をすることにより、時効を一時的に中断させることができます。

裁判外の請求によって「いつ時効を中断したか」を証明するために、裁判外の請求のやりとりはすべて発送日や到着確認ができる内容証明郵便を利用することが一般的です。内容証明郵便を送ることで、貸金業者が「時効の成立」を主張したとしても、その主張を退けることができます。

裁判外の請求は、請求書を送るだけなので簡単かつ手軽にできるメリットがありますが、中断できるのは6ヶ月だけ且つ効力があるのは最初の1回のみというデメリットもあります。

そのため、時効が中断している6ヶ月の間に裁判所に訴訟の申し立てを行わないと時効の中断が無効になってしまいます。

貸金業者から取引履歴を取り寄せただけでは時効は中断しません
過払い金請求をするために貸金業者から取引履歴を取り寄せますが、この段階では時効は中断していません。その後に利息を再計算し貸金業者に過払い金請求の書面が到着することではじめて時効が中断します。

裁判所に申し立てを請求する(裁判上の請求)

裁判所に申し立てをすることでも時効を中断させることができます。裁判所の請求には以下のものがあります。

どの手続きの場合でも、裁判所が申し立てを受理した時点で時効が中断し、裁判が確定した時点で進行していた時効はゼロに戻ります。

訴訟の提起とは

裁判所で過払い金請求の裁判を申し立てることです。この場合、請求額により方法や裁判所が違います。

少額訴訟の場合は1回の裁判で終了し、その日のうちに判決がでます。ただし、貸金業者が通常訴訟で裁判をおこなう旨を届け出た場合には通常訴訟での裁判となります。

支払い督促の申し立てとは

裁判所から督促状を出してもらう制度で、この申し立てをすることで貸金業者に対し、過払い金を取り立てることができます。

支払い督促の申し立ては、書類審査のみでおこなわれる手続きです。そのため、裁判所に出向く必要もなく、必要事項を記入した申立書を貸金業者の住所を管轄する簡易裁判所に提出すれば済むため、比較的簡単におこなうことができます。

ただし、貸金業者は支払い督促に納得できない場合、異議申し立てができます。貸金業者が異議申し立てをした場合、通常訴訟にて裁判をすることになります。

支払い督促申立書のひな型は、裁判所のホームページからもダウンロードできます。しかし、通常訴訟に移行する可能性が高いため、時効が迫っている場合はまず司法書士や弁護士など専門家にご相談ください。

民事調停の申し立てとは

裁判官ではなく、裁判所から指名を受けた一般有職者(調停委員)が当事者双方の話を聞いて歩み寄りを促し、当事者同士の合意によって問題の解決を図る方法です。訴訟と比べると、手続きも簡単で費用も安く、解決までの時間も比較的短くて済みます。

ただし、貸金業者の同意がなければ時効は延長されません。そのため和解などができなかった場合、1ヵ月以内に訴えを起こす必要があります。

10年の時効期限がすぎても過払い金請求できるケース

過払い金の時効期限は最後の取り引き日から10年です。しかし、次のような場合は時効期限がすぎていても過払い金を請求できる可能性があります。

現在も返済中である

過払い金請求の時効が成立するのは最後の取り引き日から10年です。現在も返済している場合、10年間も返済をしていないことは考えにくいため、そもそも時効は成立していません。

借り入れと返済を繰り返している

一度完済したあとに同じ貸金業者から再び借り入れをした場合、10年以上前の取り引きで発生した過払い金を請求できることがあります。

ポイントは「①最初の取り引き」とそれを「②完済した後に再度借り入れをした取り引き」が一連の取り引きとみなされるかどうかです。

「①最初の取り引き」と「②完済した後に再度借り入れをした取り引き」が一連の取り引きとみなされた場合は、時効の起算日は「②完済した後に再度借り入れをした取り引き」の最後に返済(または借り入れ)をした日となります。

そのため、「①最初の取り引き」で完済したのが10年以上前であっても、「②完済した後に再度借り入れをした取り引き」の時効が成立していなければ、「①最初の取り引き」の際に発生した過払い金も請求できます。

「①最初の取り引き」と「②完済した後に再度借り入れをした取り引き」が分断した取り引きとみなされた場合は、10年以上前に完済した取り引きで発生した過払い金は、時効が成立しているため請求できません。

分断した取り引きとみなされるかどうかは、新たに契約書を交わしたか、完済から次の借り入れまでどの程度の期間が開いているかなどさまざまな事情を考慮して判断する必要があり、個人で判断するには限界があります。

同じ貸金業者で借り入れと完済を繰り返している場合には、司法書士や弁護士など専門家に相談してください。

貸金業者からの不法行為があった

貸金業者に不法行為があったことが認められた場合には、時効について別の法律が適用されます。不法行為とは、違法な行為によって人に損害を与えた場合のことを言い、被害者は加害者に対し損害賠償請求ができます。

不法行為が認められた場合、時効が成立するのは「最後の取り引き日から10年」ではなく、「損害を知ってから3年」となります。「損害を知った」というのは、取り引き履歴の開示を受けたときと考えられますから、過払い金の発生を知ってから3年以内であれば、仮に完済してから10年以上が経過していたとしても、損害賠償金として過払い金を請求することができます。

貸金業者からの不法行為とみなされる行為には次のようなものがあります。

不法行為を個人で判断したり証明したりすることには限界があります。まずは司法書士や弁護士などの専門家に相談してください。

時効期限が来る前に過払い金請求をすべきケース

長年にわたり貸金業者への返済を続けている場合、過払い金が発生していることが多く、特に次のような場合は過払い金が発生している可能性が高くなります。

利息制限法の上限金利を超えて借り入れしている場合

貸金業者から借り入れをする場合、利息制限法により借り入れ元金に応じて利息は年15%から20%と定められています。

利息制限法の上限金利

借入額 上限金利
100万円以上 15%
10万円〜100万円未満 18%
10万円未満 20%

この金利を超えて借り入れをしていた場合は、ほとんどのケースで過払い金が発生しています。特に100万円以上の借り入れをしていた場合は、高額な過払い金が発生している可能性があるため、必ず手続きをするようにしてください。

2007年以前に借り入れしている場合

2006年の最高裁判所において、利息制限法(利率15%〜20%)の上限金利と旧出資法(利率29.2%)の上限金利の差分であるグレーゾーン金利を原則無効とした判決が出ました。

旧出資法の改正がおこなわれ金利が20%以下になったのは2010年ですが、この判決により2007年ごろから、アコム・プロミス・アイフルなどの大手の貸金業者は金利を見直しました。

大手の貸金業者が金利を見直したことにより、ほかの貸金業者も利息の下方修正をおこない、利息制限法の上限金利に変更しています。そのため、2007年より前に借り入れをしている方の場合、過払い金が発生している可能性が高いといえます。

滞納していても督促がこない場合

返済が滞っているにも関わらず、貸金業者から督促がこないことが稀にあります。貸金業者からの連絡がこない理由として、次のような理由が考えられます。

債務者が引っ越ししたにも関わらず、住所変更などの手続きをおこなっていない場合や、電話番号を変更した場合などに、貸金業者が債務者と連絡が取れなくなることがあります。引っ越しをした場合は住所変更の手続きもきちんとおこなってください。

督促がこない理由として、貸金業者が倒産してしまっていることもあります。貸金業者が倒産してしまった場合、過払い金が発生していたとしても過払い金の請求ができなくなります。また、倒産まではしていなかったとしても貸金業者の経営悪化により戻ってくるお金が減ってしまう可能性もありますから、確認するようにしてください。

他にも過払い金が発生している場合も、督促をしない貸金業者もあります。この場合、督促分の金額が過払い金に充当されている可能性もあります。貸金業者は誰に過払い金が発生しているかを把握することができますから、もしも過払い金請求をされた場合に「なるべく過払い金を返還しなくてもいいような口実」として督促をしていない可能性もあります。

いずれにせよ、督促がこない場合は貸金業者に問い合わせるようにしてください。

過払い金請求の期限が切れて時効になりやすいパターン

一度完済している取り引きがある

すでに一度、完済している取り引きがある場合には注意が必要です。過払い金の請求ができるのは、「最後の返済をした日から10年」です。

その期間を過ぎてしまうと、仮に過払い金が発生していたとしても、時効が成立してしまい、過払い金を取り戻すことができなくなってしまいます。もしすでに一度、借入金の返済がすべて終了している取り引きがある場合は、時効を迎える前に過払い金が発生していないかどうかだけでも確認をするべきです。

なお、現在も返済中である場合には、たとえ10年以上前から続いている取り引きであった場合でも時効は成立しませんので、慌てる必要はありません。ただし、返済中であっても過払い金が発生しているかどうかを確認することができ、発生していることがわかった場合は請求をすることができます。

戻ってきた過払い金で借金を清算できる可能性や、返済額が減る可能性もありますから、まずは過払い金が発生しているか確認することをおすすめします。

自分で過払い金請求の手続きをおこなう

過払い金請求の手続きは個人でおこなうことも可能です。まず貸金業者から取引履歴を取り寄せ、利息が法定金利内かを再計算し、過払い金が発生していれば請求書面を貸金業者に送り、直接交渉をします。

貸金業者に取り引き履歴の依頼をしてから実際に手もとに届くまでには、貸金業者にもよりますが3週間から1ヵ月ほどかかります。しかし、司法書士や弁護士からの依頼を優先し、個人からの依頼の対応は後回しにされる可能性もあるため、個人で請求した場合には取引履歴が届くまでにさらに時間を要する場合もあります。

個人でも対応できることだからと自分で対応した結果、予想外に時間がかかり時効を迎えてしまうケースもあります。時効がギリギリの可能性がある場合には司法書士や弁護士などの専門家に依頼してください。

時効期限になっていなくても過払い金請求ができないケース

時効期限になっていなければ必ず過払い金請求の手続きができるかというと、実はそうでもありません。時効期限になっていなくても過払い金が取り戻せない場合もあります。

過払い金請求の時効まで、まだ時間があるからといって安心せず、早めの手続きをすることをおすすめします。

貸金業者が倒産する

貸金業者が倒産してしまった場合は、時効期限になっていなくても過払い金請求ができなくなります。名の知れた貸金業者の倒産はあまり起こらないと思うかもしれませんが、過去には大手貸金業者の武富士が倒産している例があるため、大手貸金業者だからと安心してはいけません。

ただし、倒産後であっても一定の猶予期間がありますから過払い金請求ができる場合もあります。倒産がわかってもすぐに諦める必要はありませんが、取り戻せる金額はかなり低くなり、数%になってしまう可能性があります。

また、倒産したと思っても実は吸収合併されている場合もあり、その場合は吸収合併後の貸金業者に対して過払い金請求をすることができます。

貸金業者が倒産したからと諦めてしまうのではなく、司法書士や弁護士などの専門家に相談してみることをおすすめします。

もともと金利が低く過払い金が発生していない

過払い金は、法改正前の利息制限法と出資法の2つの法律の上限金利に差があったことから発生したものです。2010年の法改正前は、利息制限法を超える金利で貸し付けをおこなっていた業者も多数存在していましたが、当時も利息制限法の上限金利内で貸し付けをおこなっていた業者もあります。

金利が低い金融機関
大手銀行のカードローン、JA、信用金庫、労働金庫、商工組合中央金庫などの公的機関

過払い金請求の時効がいつかわからない方は早めに相談を

過払い金は、本来であれば払う必要がないお金ですから請求して取り戻すことができます。しかし過払い金請求は「最後に取り引きした日」を起算日として10年で時効が成立してしまいます。時効が成立する前に、早めに手続きをすることをおすすめします。

たとえば10年以上前の取り引きであっても、時効が成立していない限り過払い金を取り戻すことができます。「借りた日付を覚えていない」「最後に返済した日付を覚えていない」「時効が成立しているかどうかわからない」「過払い金が発生しているかどうかわからない」など、過払い金についてお悩みの方は、早めに杉山事務所にご相談ください。

杉山事務所は過払い金請求の実績が多数あります。無料で相談に応じていますので、お気軽にご連絡ください。

過払い金請求・債務整理は無料相談をご利用ください。

ひとりで悩まず、まずは相談ください。 0120066018 0120068027 0120065039 0120069034 0120067009 0120070146 0120131025 0120678027 過払い金請求・債務整理のお問い合わせ

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